●『Christmas fantasy』
「わぁい、真っ白な雪ときらきらのイルミネーション♪」 ふたつに結ばれた青い髪をなびかせて、くるくると舞う瑠璃羽は妖精かのように乃愛の瞳に映る。 「ほらほら、見て見て!」 その声にとっさに目をそらした乃愛。 それに対し瑠璃羽はぷくりと頬を膨らませると、気付かれないように小さな手で雪を握る。 「えいっ!」 瑠璃羽の手から放たれたのは、雪のかたまり。 「うわっ!?」 グシャっ。 それはそれは見事なほど、乃愛の顔面に命中。 「いたた……」 「ふふ、じっとしてたら寒いでしょ〜。のあさんも一緒にあそぼ〜♪」 「雪合戦、だね。よぉし、受けて立つよ〜?」 乃愛が気合をいれて雪をかき集め、それに負けじと瑠璃羽も第二投をと意気込む。 すると、瑠璃羽の足が雪にとられ、バランスを崩してしまった。 「きゃぅんっ!」 「危ない!」 瑠璃羽は反射的に目を閉じた。しかし、 「……あ、あれ?」 目を開けると、そこには乃愛の顔が。気付けば腕の中。 「飛び込むなら雪じゃなくて俺の胸にしてよね〜?」 乃愛は優しく微笑むと、指先で瑠璃羽の鼻をツンとつつく。 「うぅ、ありがと……。今日こそはドジしないようにって思ってたのになぁ」 顔を真っ赤にしてうつむく瑠璃羽をよそに乃愛は笑いをこらえる。 「あ……」 すぐさま乃愛が笑ってることに気付く瑠璃羽。 「今、笑ったでしょ」 「笑ってないよ」 「いや、絶対笑ってたよ〜! むぅ〜」 頬をふくらませながらも、何故だかおかしくなって瑠璃羽も笑ってしまう。 乃愛の大きな腕に包まれながら、不思議とやさしい気持ちになって笑いが止まらない。 「ね、のあさん。私、帰りにあったかい飲み物のみたいなぁ」 乃愛の白いジャケットをぎゅっと握る瑠璃羽。 (「これくらいのお願い、いいよね?」) 「温かい飲み物? お安い御用だよ〜」 迷うこともなくそれに応えると、乃愛は瑠璃羽をすべらないように支えて立たせる。 しかし、絶え間なく降る雪に大人しくはしていられない瑠璃羽。 無邪気に笑う姿に、乃愛は声をかける。 「瑠璃羽」 「ん、なぁに〜?」 「温かい飲み物もいいけど、もう少し一緒にいたいな」 「……えっ?」 「だから、ゆっくり歩いていこ?」 乃愛の言葉にこくりと頷くと、ふたりは歩幅を合わせた。 どこまでも続く雪道に、ふたりだけの足跡を残して――。
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