チェスター・ドルトムント & 北原・清香

●『いつまでも一緒に』

 街はすっかり夜を迎えていた。
 二人だけで過ごす時間は、いつもあっという間に過ぎていく。
 それでも今日はたっぷりと二人きりで色んな場所に出かけて、笑って、話して。
 最高のクリスマスデートを過ごせたわけで。
「……もうすぐだな」
 チェスターは路地を歩きながら、小さく溜息のように呟いた。
 隣を歩む清香がきょとんとその横顔を見上げる。
 二人が歩む道は、清香の家の側だ。彼女を家に届けたら、今日のデートは終わる。
 ほんの少しの別れと分かっていても、名残惜しくて堪らなかった。
 今日という日が終わってしまうようで寂しかった。
 清香も同じ思いを胸に抱いたのだろうか。彼女もマフラーに顔を隠すように俯き、黙って何度か瞬きをする。

 無言のまま二人は夜道をそれでも歩いた。
 一歩一歩が妙に重くて、でも進まないわけにはゆかないと前に進む。
 その足が、小さな児童公園の横を通り抜けようとした時だ。
「……あっ」
 今度は清香の方が声を響かせ、足を止めた。チェスターが振りむくと、彼女の視線は空に向けられていた。
 同じ方向を見て、チェスターも理解する。
 空から雪が降り始めていたのだ。
「――綺麗ですね」
「少し眺めて行こうか?」
 彼が言うと、彼女はにこりと微笑んだ。
 どこにでもある素朴な児童公園――その中で一番高い場所。一瞥しジャングルジムを見つけた二人は、その上へとするする登る。
 ジャングルジムのてっぺんに並んで腰かけて空を仰ぐと、雪はさっきよりも本格的に降り出していた。
 ふわふわと大きな白の固まりが休まず暗い空から落ちてくる風景は、まるで今宵の聖夜を祝福する為に、天使の羽根が舞い落ちてくる様で――。
 言葉も無いまま二人は空を眺めた。
 空気はますます冷えて、息は白く空気に溶ける。
 チェルシーは彼女の体に少し身を寄せ合い、小さな声で尋ねた。
「寒くない?」
「……大丈夫です」
 彼女は雪より綺麗な微笑みを返す。
「そうか……」
 彼は頷いて、指先が触れていた彼女の小さな手をぎゅっと握った。冷たく冷えた指だった。寒い中にいるのだから当然かもしれない。温めないといけないと思う。
 チェルシーが握ると、彼女もそっと握り返してきた。
 お互いの掌から届く体温がとても心地よい。
 ――この暖かささえあれば、冬の夜の寒さなど忘れてしまいそう。

 鈴の音が鳴り響く聖夜の夜。
 誰もいない公園で二人は時を忘れて長い間、手を繋いだまま、雪を眺めていた。
 出来ることならいつまでもこうして一緒にいたい、そう願いながら。



イラストレーター名:玄吾朗