●『聖夜の約束』
夜空には輝くような星空が。そこから煌く雪の結晶が落ちてくる。 ホワイトクリスマス、二人で過ごすクリスマスとしては今年で二回目となった今日、いつきと華呼は公園の一角にあるベンチに座って話しながらゆっくりと過ごしていた。 もうじき卒業であることも踏まえ、会話の内容は楽しかった学園生活の日々のこと。 今まで共に過ごしてきた思い出深い時間の数々。 クラスメイトと行ったお花見、結社の仲間と戦ったゴースト退治に、結社での楽しい時間……その全てが、楽しかった思い出として心の中に刻み込まれている。 「もうじき卒業ですけど、この学園に来れて良かったです」 自由な校風が気に入り入った学園とはいえ、やはり入学の最初というのは不安がつきものである。 だが、そんな不安を跳ね除けるほどの学園生活がそこにはあった。 「良いことがたくさんありました。……いつきくんにも、会えましたしね」 少し照れながらも、華呼ははっきりと想いを伝える。 いつきと出会えたこの学園生活は華呼にとって一生の思い出。 いつもは恥ずかしくて照れてしまい、一歩引いてしまうこともあったが、今日ばかりは伝えたかった。 でもやはり恥ずかしくて、頬を赤らめ俯いてしまうのだが、そんな華呼をいつきは微笑んで見る。 「そうだな。華ちゃんと初めて会ったときのこと、今でも覚えている……」 いつきの脳内でよみがえる出会いの瞬間。その頃から、今までの二人で過ごした思い出を話しながら微笑みあう。
だが、しかし。学園での生活は永遠ではない。迫る卒業という別れ。 「でも卒業したら……」 華呼はそこで言葉を止め、そっと息を吐く。 「お友達とは離れ離れになってしまいますね」 一緒に、様々な時間を過ごした仲間たち。 良いこと、悪いこと、素敵なこと、ときめくこと。本当に色々あった。 そんな仲間たちと離れてしまうのは、やはり寂しい。 回避しようのない別れが、すぐそこまで迫っていた。 どこか寂しげな華呼の肩をいつきはそっと、優しさをこめて抱き寄せる。 「オレがずっと傍にいるよ」 これから先。何があっても、ずっとずっと……。 そんな想いがこめられたいつきの言葉に華呼は思わず驚くが、今日ぐらいは素直になりたくて、いつきの身体に頭を預けた。 「……はい。ずっと一緒です」 手に持ったホットドリンクの温かさより、お互いの間から伝わってくる熱の方が温かくて、心地よくて。 いつきは強く華呼の肩を抱きしめ、華呼もいつきに寄り添うように。 お互い「大好き」だという想いをこめた、その言葉。 傍にいる。ずっと一緒に。 聖夜に交わした二人の未来への約束は永遠という形で残っていくだろう。
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