●『ゲリラサンタ見た目だけちびっこ部隊』
12月24日も、もうすぐ終わり。菘と晋作はクリスマスケーキを食べ終え、何気無く外の景色を眺めていた。 パーティーの準備に始まり乾杯を経て、ご馳走を楽しみはしゃいで……。 ここまでノンストップ、フルスロットルの勢いでクリスマスを満喫したわけだが……ケーキも終わってしまうと一気に終わりを迎えてしまったかのようだ。 「一気に手持ち無沙汰になったねぇ」 菘は晋作の顔を覗き込む様にして囁いた。彼も小さく頷けば、何かないかと目を伏せて考える。 「皆も、クリスマス楽しんでるかな?」 菘の一言が彼に大きなひらめきを与えたようで、嬉々とした様子で彼女に振り返る。 「アイツんところに行こう、確か暇してるっていってた」 共通の友人のことである。今日は一人で寂しいクリスマスを過ごすとぼやいていたのを思い出したのだ。 「それじゃあ行こっか」 菘はハンガーに掛かったコートに手を伸ばすも、すっとその手を遮る様に晋作の手が絡みつく。 その手の意味を問う菘の表情は、頭から疑問符が浮かび上がっていそうな不思議そう。 「ただ出かけるんじゃつまらないだろ?」 ニヤッと笑みを浮かべる晋作。 「ふふっ、じゃあどうするの?」 菘は表情から読み取ると、楽しそうに言葉の意味を問う。 「どうせならサンタの格好して、僕たちでプレゼントを配ろう!」 それは面白そうと、菘は花咲く様に笑みを頷いた。 しかし、プレゼントは何を送れば……と思っていれば、そそくさと準備を始める晋作の様子を後ろから覗き込んでいく。 包んでいたのは詠唱武器。ちょっと物騒なものだが……そういえば、このタイプの武器でいいものが無いとぼやいていたのを思い出せばちょうどいいところかと思えてしまう。 着替えも終わると、すぐ近くの友達の家へ向かう。 大分遅くなった時刻、相変わらず降り注ぐ粉雪は、人気を振り払うかのように静寂の夜を作り出す。 二人っきりの雪道。静かに降り注ぐ雪景色に目を奪われるも、互いに綺麗と一番思えたのは、互いの姿だろう。 友人宅に到着すると窓辺へと回り込み、中の様子を覗き込む二人。 退屈そうにTVを見ている友人は、こっちには気づきそうも無い。 顔を見合わせ、小さく頷けば窓をガラッと開く。 「ゲリラサンタ部隊さんじょーう!」 「決して怪しい者ではないのですよーう!」 明らかな不法侵入だが、ハイテンションな二人の様子に呆気にとられた友人はポカンとしながら見上げるだけ。 二人は抱えていた袋からプレゼントを取り出すと、満面の笑みを浮かべそれを差し出した。 「Merry Christmas!! いつもありがとう!」 「Merry Christmas!! いつもありがとう!」 二人揃っての言葉、テンションに流される様に友の表情も徐々に笑みに変わっていく。 今年のクリスマスもこうして更けていく、深い思い出を刻みながら……。
| |