●『クリスマスの街角で』
クリスマスの日、とある街角の事。どこもクリスマス一色になっている町並みを、二人で歩く。二人の今の関係は、四年前のクリスマスで一緒に買い物をした事がきっかけだった。実際は、蒼が千歳にくっついていく形で、共に食べ歩きしていただけだが。けれど結局、それがきっかけになって今の関係が続いているのだから、運命とはわからないものである。そんなわけで、二人で初心に戻ってのクリスマスのデートだ。 (「あの時と違って、僕達ってもう恋人なんだよね」) 隣を歩く千歳の背中を見ながら、蒼は心の中で呟いた。気温は低いけれど、寒くはない。何故なら……。 「千歳さん」 「うにゃ?」 愛する恋人の名を呼ぶと、間をおかずに彼女が振り返った。首元の白いマフラーが揺れる。その反対側は、自分の首に繋がっている。その、つまり。二人で、一本の長いマフラーを仲良く巻いているから。 「暖かい、ですね」 蒼の言葉の後、そっと身を寄せる千年。 「うにゃ。暖かいねっ♪」 千歳自身も、あと1年と少しの学生生活を少しでも楽しめたらいいと。一緒にいられたらいいと。言葉に出さずとも、行動で示していた。そんなふうにして二人で、ブティックやジュエリーショップでのウインドウショッピングを楽しんでいる。 ただ、行く店行く店が、蒼からしてみれば目玉が飛び出そうな程の値段がする高級ブランド店ばかり。しかし、バイト時間を増やせばいけるかな、と思いながらついていく。そんな中、とある店の前で立ち止まる二人。 「綺麗だな〜♪」 満足そうな千歳。どうやら、アクセサリーや小物を扱っている店らしい。蒼は、値段は極力見ないようにしながら、彼女に似合いそうなものを探す。 「千歳さんに似合いそうなのはこれかな?」 「あ。これ、可愛いっ♪」 硝子の向こうには、銀光の鮮やかなネックレスが飾られていた。セットのイヤリング共々、煌びやかに輝いている。 「いいなあ。プレゼント、してくれる?」 蒼を見上げる千歳の視線に、彼もちらりと値札を確認した。1、2……零の数がおかしい。 「うっ、すぐには無理だけど、何とかするよ」 冷や汗をかきながら、少し視線を逸らしてしまう。くすくす笑う千歳は……ふと、小さなリングに目を止める。じっと、黙り込んだまま。 「って、そっちもですかっ?」 慌てる蒼を、じっと見上げる千歳。先ほどまでと雰囲気が違う。 「うにゃ、指輪は今すぐ買ってほしい訳じゃないけどね」 千歳はショウウインドウの方に視線を戻す。頬は赤く染まり、目の辺りは髪に隠れて見えない。 「でも、将来は期待してるんだからね?」 蒼にもようやく合点がいった。しばしの沈黙の後、真っ赤になって頷き返すのがやっと。 「約束、だよ?」 千歳の言葉は、小さいけれどはっきりと蒼の耳に残り。小さな声で大きな約束をして。まだまだ初々しいカップルを、クリスマスイルミネーションが照らしていた。
| |