●『聖夜のお誘い待ち』
イルミネーションが街を彩る。
聖夜の夜は、人々を色めき立たせるのだ。
カップルたちはそんな特別な聖夜の雰囲気に浸る為に、
そんなカップルたちにあこがれる者は出会いを求める為に、街を彷徨う。
今日はクリスマス。カップルにとって、特別な一日。
零は狭霧を誘って、聖夜の街へと繰り出していた。煌びやかで、優雅なドレスに身を包む二人。二人は素敵な男性から声をかけられないものかと考えつつ、街中を歩く。
「もっといい男はいないのかな」
容姿端麗な二人のこと、声をかけてくる男性は多い。しかし、自分好みの男性なんて、なかなか見つからないものだ。聖夜に繰り出す男性なんて、軽々しい服装で、いかにもチャラい連中ばかりである。彼女たちのお眼鏡にかなう男性は一人としていなかった。
今も二人は、声をかけてきた男性をバッサリと断ったところだ。
「んー、なかなかいないものね」
狭霧は溜息をつく。すでに何人断ったか、数えるのも面倒である。
「そうだね……」
零はぼんやりと何か考え事をしていた。
「零？」
そんな零の様子が気になった狭霧。彼女が声をかけると、零はびくりと肩を震わせる。
「どしたの？」
「いや、なんでもないよ。あはははは」
零は照れ隠しして笑っていた。狭霧は零の妙な様子に違和感を覚えながらも、そのまま町並みへと目をやる。
「彼女たち、二人だけ？ 俺たちとカラオケでも行かない？」
そこへ、二人組の男性が新たに狭霧と零へと声をかけてきた。二人とも、欧米とのハーフだろうか。背も高く、服装も割とイケていて、はにかむ笑顔が実にさわやかだ。ルックスだけなら合格点と言える。
「あ、いえ。ボクたちなら間に合ってるから」
しかし、零がそれらの男からの誘いを、あっさりと断ってしまう。ハーフの男性二人は残念そうに去っていった。
「ちょっと、零。今の良かったんじゃない？」
「いいんだよ。あんなのは奥底で悪いこと考えてるに違いないよ」
そーおと言いつつ、去った二人の背中を見やる狭霧。すでに二人組は街中の人ごみへと姿を消してしまっている。
「このままボクと……しちゃおっか？」
「えっ？」
狭霧の顔が、予期もせぬ相方の言葉で真っ赤に染まる。
「うふふ、冗談だよ。さ、行こっ」
零はにこにこと微笑み、狭霧の腕へと抱きつく。
「え、あ……うん」
狭霧は思う。おそらくこの後、男性から声がかかることはないんだろうなと。そんなことを考えつつ、狭霧は零とともに聖夜を過ごすのだった。
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＆ 綾音・零
