●『だっきゅるv 〜にかいめのクリスマスver.〜』
「そういえばこんなこともあったねー」 「あはは、そうだったねー」 それは、ゆうと晶の二人が過ごす二回目のクリスマス。 今までのこと、これからのこと、いろいろなことを楽しく話しているうちに次第に夜も深くなってきて……。 すこしずつ話の中にあくびが混じる回数が増えてきたら、楽しいお喋りの時間は今日はここまで。話の続きはまた明日。 「おやすみー」 「ん、おやすみ」 そんなわけで二人で仲良く布団に入って、ゆうと晶はお互いを近くに感じながらそっと目を閉じた。 ほどなくして、穏やかな二つの寝息が部屋に満ちてゆく……のだが、 「……うー……ん……」 さっきまでの楽しい時間があったからか、それとも別の原因か。まどろみの中でふと寂しさを感じて、ゆうは右手を何かを探すようにさまよわせる。 その手が抱き寄せるのは……隣で眠っている、ゆうの大好きな温もり。 そして、きゅっと抱きつくゆうの体を、晶は無意識のままに腕を回して抱き寄せる。 「……♪」 愛しい人の温もりに包まれて、幸せそうな笑顔を浮かべてゆうは再びまどろみの中へと帰ってゆき、懐に感じる暖かさに晶もまた顔を綻ばせる。 そうして仲良く抱き合って眠る恋人達を、夜空の星が静かに見守っていた。
「……ん……」 窓から差し込む朝の光に軽く身じろぎして、晶はゆっくりと目を覚ました。 なんだかとても安心できるような……そんな良い夢を見ていたような気がする。 ふっと笑って窓の外に目をやれば、綺麗に晴れた空の下で木々がその葉を風に揺らしている。 今日もきっと良い天気になるだろう。 眠気の抜け切らない頭で、晶はぼんやりとそんなことを考え……。 「……きーちゃん?」 「!?!?」 胸元から聞こえて来た声に一瞬で意識を覚醒させる。 声の元に視線を向ければ、そこには大切な恋人の顔。……しかも、自分の腕はしっかりと彼を抱き寄せている。 (「ええ!? なんでゆうちゃんを抱いているの!?」) あまりの事態に驚き硬直する晶の顔を不思議そうに見つめていたゆうだが、もぞもぞと体を動かして晶に抱きつきなおすと、布団と恋人の温もりに顔を綻ばせて再び眠りへと落ちてゆく。 「……大好きだよ」 (「〜〜!!」) 眠りに落ちる間際、甘えるようにゆうが口にした言葉に晶は真っ赤になって動けなくなる。 大好きと言ってくれるのは嬉しい。 でも、同じくらいに恥ずかしい。 そして、大切な人の温もりを腕の中に感じるのは幸せでもある。
……結局、お昼近くになって小さな恋人が目を覚ますまで晶は動けなかったのだった。
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