●『クリスマスのプレゼントはサンタさんで・・・』
「惣一郎さん、こんばんは〜」 「いらっしゃい、真朱さん。寒かったよね? さ、入って」 クリスマスイブの夜、真朱の訪問を受けた惣一郎は、そうにこやかに笑って彼女を迎え入れた。クリスマスは一緒に過ごす……それが2人の約束だった。 「これにしてみたんですけど、どうでしょう〜?」 真朱が持ってきた箱から出てきたのは、ホワイトチョコレートで出来たクリスマスケーキ。ヤドリギを模した飾りが、いっそうクリスマスらしい気分を引き立ててくれる。 「うん、素敵だよ」 ありがとうと笑った惣一郎は、実は自分も用意しているものがあるのだと、背中に隠しておいたプレゼントボックスを出した。 「えっ……?」 「開けてみてよ」 驚いて目を丸くした真朱を促す惣一郎。じゃあ、とラッピングを丁寧に解いていくと、その中から現れたのは……。 「サンタ……の服、ですか?」 「そう。きっと真朱さんに似合うと思って」 普通のサンタの格好と異なっているのは、それが女の子向けに作られたもので、可愛らしいワンピース風のデザインになっていることだろう。 ふわふわとした白いファーは手触りがよく、持ち上げると胸元の白いポンポンがちょこんと揺れる。 「ね、着てみてよ」 「えっ? まあ、いいですけど」 惣一郎の言葉に、なら……と服を持って隣の部屋へ向かう真朱。しばらくして戻ってきた真朱は、ちょっと恥ずかしそうにサンタ服の裾を揺らしている。 その姿は、惣一郎の想像以上に、可愛くて。 「すごく似合ってるよ、真朱さん」 「そっ、惣一郎さん……」 思わずぎゅっと後ろから抱きしめれば、顔を真っ赤にした真朱が声を裏返させる。年上なのは真朱の方なのに、すっかり惣一郎のペースでしたいようにされていて、それがちょっと悔しいような、でも。 こういうのも、まあ……。
「……さ、真朱さん。ケーキ食べようか?」 それからちょっとだけ、静かな時間が過ぎたあと。 2人は真っ白なケーキを切り分けて、2人で一緒に食べるのだった。
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