●『First holy night〜けもパジャマ〜』
パステルカラーのぬいぐるみの中、優斗とアゲハは、動物をモチーフにしたパジャマに身を包み、二人きり、水入らずのパジャマパーティーを満喫していた。 ゆったりとしたパジャマに暖かい部屋、そして何より愛しい相手との大切な時間だ。自然に口元が緩み、笑みがこぼれる。 自分の顔がにやけているなあ、とアゲハは思ったが、それもこれも優斗が傍にいるからだ。満面の笑みを隠すことなく、ケーキに手を伸ばす。 「うわー優斗! これ甘くて美味しいよ!」 「そう? よかったね」 無邪気にケーキを頬張るアゲハを紅茶片手に眺めながら、優斗も自分の頬が緩むのを感じていた。アゲハを見ていると飽きないどころか、心が暖かいもので満たされていくように感じる。優斗にとってアゲハは、愛し過ぎて、言葉では言い表せないほどの存在だ。大好きだよ、と何度も伝えてきたが、まだまだ足りないなと、アゲハを見るたびに思う。 「アゲハ、そんなに頬張らなくてもケーキは逃げないよ?」 リスの様に口いっぱいにケーキを頬張るアゲハに、とうとう優斗はくすくすと笑い出した。頬がぱんぱんに膨らんでいる。そんな子供みたいな姿すら、優斗にとっては愛しく映るのだが。 優斗に笑われて慌ててケーキを飲み込むと、アゲハはケーキが無くなった分だけまた頬を膨らませた。今度そこに入っているのは、ケーキではなく空気だ。拗ねたように頬を膨らませたアゲハだが、その瞳ははにかんだ色を浮かべている。 「むー。だって美味しいんだもん」 「ほら、クリームついてる……うん、甘い。美味しいね」 優斗が笑いながら手を伸ばし、口元からクリームを掬い上げてぺろりと舐めると、笑われてむくれていたアゲハの頬が、ぱっと赤く染まった。 「あ。ありがと優斗」 クリームを舐める優斗の仕草がアゲハにはなんだか艶かしく映って、見惚れてしまう。アゲハにとっては、優斗のその行動こそが甘い。鼓動が早くなるのが分かって、余計に恥ずかしくなってしまう。 照れたような、はにかんだ笑顔を浮かべて自分を見つめているアゲハに、優斗は優しい笑みを浮かべると、彼の泣き黒子にそっと手を添えた。 こんなに愛しい、大切な人との時間が永遠であれば良いのに、と願わずにはいられない。その思いを、言葉に乗せる。 「ね。これからもずっとずっと一緒だからね」 「うん。ずーっと大好きな優斗と一緒だよ」 優斗が小さく囁くと、アゲハははにかんだ笑みを嬉しそうな笑顔に変えて、力いっぱい頷く。 思いは同じだ。アゲハも、優斗とずっとずっと一緒に居たいと思っている。優斗のことが、大好きで、愛しいという気持ちを更に強く伝えたくて、その想いを込めて、そっと彼の唇に自分の唇を重ねた。 優斗は少し驚いたように目を開いたが、すぐに嬉しそうな笑みをその顔に浮かべて、アゲハのことを抱きしめる。 聖なる夜に交わした特別な誓いのキスは、クリームよりも甘美で優しい味だった。
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