神谷・圭介 & 津軽野・海

●『ふんわりあったかしあわせの味』

 夜を迎えた冬の街は賑やかだ。
 都会の灯りやイルミネーションで美しく飾られた並木道。夜が更けるにつれて空気はしんしんと冷えてゆくのに、その明るさは一層輝きを増してゆくようだ。
 いつもの帰り道を、息を白くしながら、圭介と海の二人は、二人用の長いマフラーを一緒に巻いて、美しい夜景を見ながら仲良さげに輝く街並みを眺めて歩いていた。
 二人の心が通じたのは、数ヶ月前の夏の頃。
 それから少しずつ二人だけの時を育み、たくさん話して、たくさん笑って、――新しい季節を迎えて、初めてのクリスマス。
 お互いへの気持ちは日に日に膨らむばかりだけど、その気持ちをどうしたらいいのかすら分からない不器用な二人は、聖夜の夜もただ仲良くお喋りしながら歩く。それだけで十分幸せだった。

 冷たい風がぴゅうと吹き抜け、二人は寒さに身を縮めながら、道路を横切り、通りへ面したいつも通り抜けて帰る広場の中へと進んだ。
 すると……。
 広場には大きなクリスマスツリーが作られていた。
 様々な色や形の電飾で飾りつけられた、巨大で華麗な美しいツリーは広場の中央に据えられ、幻想的な美しさで輝いている。
 昨日までは無かった筈のツリーに驚き、二人は立ち止まる。
 だがすぐに自然と視線を合わせると微笑みあい、ゆっくり広場の中へと進み出た。
 イルミネーションのモニュメントが並ぶ光の庭を進み、クリスマスツリーの下へとやってきた二人は自然と身を寄せ合い、その幻想的な光景を黙って見上げた。
 感動するほどに美しい景色。暫く吸い込まれるように見入った後、相手の表情が気になって、海はそっと圭介を見上げる。すると圭介も海を見ていた。
「……」
 まるで吸い寄せられるかのように相手から目を反らせない。
 心臓の鼓動が高まり、体がじんと痺れた様に動かなくて――何か声を出さなくちゃと海は深呼吸するように息を飲み込もうとした――その時。

 ――ぐう。

 それがどちらの音だったかなんて、そんなの関係ない。
 大きく響いたお腹の音に、二人は思わず吹きだした。
 そして広場の角にある中華屋さんにあった美味しそうな中華まんを思い出し、笑いながら二人は其処へ向かった。
 ほかほかの大きな中華まんを一つ買い求め、半分こ。暖かな中華まんはふかふかで柔らかくて美味しかった。――だけど美味しさよりもさっきのことが思い出されて、二人はまた笑った。
 たくさん話して、たくさん笑って。たくさん時を過ごして。
 ――彼といると楽しい。
 ――彼女といると楽しい。
 もういっぱい知っている筈のことをまた、再認識して。
 ありきたりかもしれないけれど、――幸せに満ちた二人のクリスマスの夜はそうして更けてゆくのだった。



イラストレーター名:杜乃