●『楽園は、貴方の腕の中に。』
夢のような舞踏会が終わり、黎明と姫月は帰路についていた。腕を組みながら歩く2人はとても幸せそうで、それを見るだけで周囲に笑顔が零れそうな、そんなお似合いのカップルである。
しかし、今は帰り道。この楽しい一時はもうすぐ終わってしまう。この愛おしい時間をもう少しだけ。そう思った黎明の頭に、とある情景が浮かぶ。
「姫月ちゃん、少し時間を貰ってもいいですか？」
彼の提案に頷くと、姫月は行き先を黎明に預ける。
黎明の目指した場所は、彼にとってお気に入りの場所だった。
それは名も無い小さな丘だ。そして、そこに広がっていたのは、満天の星空と街の明かりで作られた星の海。それはまるで、自然と人の暮らしがコラボレーションしたかのようで、どんなイルミネーションにも負けない見事な景色だった。
「綺麗……」
「とっておきの場所なんだ……でも」
そう言って姫月の肩を抱き、少し顔を赤くしながら微笑む黎明。
「姫月ちゃんの方が綺麗だよ」
その言葉に同じく頬を赤らめて微笑む姫月。想いは2人とも同じだった。
影が重なる。姫月を優しく抱きしめた黎明は、静かに彼女の額に口付ける。まるで時間が止まったかのような感覚を味わいながらも、2人の鼓動は段々と速くなっていく。
短く、しかしとても長く感じられる時間が過ぎた後、ようやく言葉が紡がれた。
「大好きだよ……愛してる、姫月」
その優しい言葉が嬉しくて、気持ちを返すように彼女はゆっくりと黎明の頬に口付ける。
「私も大好きよ……黎明さんの傍に、ずっと居ますから…」
その言葉を、その頬に伝わる感触を、嬉しそうに噛み締めながら優しく抱きしめる黎明。暖かい腕の中はまるで楽園のように愛おしく感じられて。姫月は思わず微笑む。
気がつけば黎明の手が姫月の頬に触れる。
もう、2人に言葉は必要なかった。
お互いの視線が合い、自然と唇が触れ合う。
それはまるで、神に永遠を誓う神聖なキスのように、暖かく、そして優しい時を刻んでいった。
| |
＆ 神南備・黎明
