●『*サンタからのプレゼント*』
綺麗に彩られたクリスマスツリー、ムードを演出するキャンドル、シャンパンとケーキ。 窓の外はすでに闇夜に包まれていて、しんしんと雪が降り続いている。 (「今年もクリスマス、か」) 内心呟いて、ユーリはソファの背もたれに深く体を沈めた。 最近はいろいろとあったのだが、今日は里恵とゆっくり過ごせそうだということに気分を高揚させながら、改めて自分のセットしたクリスマスツリーを見た。 (「飾り付けもバッチリだし? クリスマス気分は最高潮ってか?」) 一人ほくそえんで里恵が部屋に来るのを待つ。 ――こんな二人きりの特別な日には私も特別にしないと……。 そして『着替える』と言ったきり彼女は戻ってくる気配がない。 いつまで待たされるのだろうと悶々とし始めたとき、部屋の扉が勢いよく開け放たれた。 「ということで着ちゃいましたミニスカサンタクロース!」 短いスカートを翻しながら、里恵がその場で一回転してみせる。 「どうかな? ユーリだけのサンタクロースだよ!」 彼女の翻ったスカートから覗くふとももを見て、ユーリは内心いやらしいことを考えながら目を細めていた。 「なんともまぁイイ格好で……よく似合ってるぜ? ホレ、俺の横に来て座れよ」 ぽんぽんと隣を促すと彼女は恥ずかしそうにいそいそと座る。 そんな彼女が可愛らしくて、ユーリは頭を撫でながら「ケーキでも食うか?」と切り分けたケーキをフォークに刺して彼女の口元へ持っていく。 里恵は桃色の唇を開いてぱくりとフォークをくわえた。 「美味いか?」 「うん!」 表面上は普通に会話をしているのだが、彼女の行動があまりにも可愛いので「バレンタインみたく押し倒してやろうか」などと内心では悶々としていたりする。 そんなことを考え一瞬ユーリに隙が生まれたとき、 突然左頬に温かく柔らかな触感が伝わってきた。 「……!?」 それが里恵の唇だと気づくのにそう時間はかからなかった。 驚いて彼女の顔を見つめると、彼女は照れくさそうに目を細めながら 「えへへ。クリスマスプレゼント!」 と茹で上がったように真っ赤な顔を満面の笑みにしていた。 そんな遠慮がちな里恵の態度を見ているうちに、ついにユーリの我慢が限界を超えた。 彼女の顎を掴んで、そのまま唇を奪う。 「!?」 やられたらやり返す。 驚きが隠せない里恵を見て、ユーリはにやりと口をゆがめた。 「ばーか、どうせなら口にしろよ」 「うっ、うっ、えっ?」 動揺して照れている彼女の背中に手を回して抱き寄せる。 「これからも俺のそばに居てくれよ、里恵」 ユーリがしっかりとそう口にすると里恵もおろおろした態度をやめて、嬉しそうに目を細めながら寄りかかった。 「一緒に過ごせて嬉しい……。うん、ずっとユーリの隣にいるからね」 そうして二人は再び唇を重ねる。 聖夜の甘い静寂の中で、食べかけのケーキの上からイチゴがころんと落ちた音だけが響いた。
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