水無月・紗玖耶 & ルローナ・チェーン

●『二人で過ごす不思議なクリスマス?』

「完璧です! これならきっと紗玖耶さんも喜んでくれるはずですっ」
 ここはクリスマスのパーティ会場。ルローナは1人、自作の料理を並べたテーブルを見渡す。テーブル上にはケーキやクッキーと美味しそうなクリスマス料理の数々が並んでいた。あの料理音痴のルローナが作ったとは思えない出来栄えだ。
「ここまで上達したのも、紗玖耶さんのお陰なのです」
 そう、実はこの料理、今までにルローナが紗玖耶から教わっていたものであり、ルローナのこの頑張り様には、料理が上達した姿を彼女に見せたいという想いと共に、その感謝の意味も込められていた。だがルローナはそれと引き換えにある事をすっかり忘れていた。
「……周りがさみしいです」
 料理にばかり気を取られて、他の飾りつけを忘れていたのだ。ある物と言えば、キラキラ光るクリスマスツリーだけである。今から飾るにしてもパーティ開始の時刻はもうすぐそこまで迫っていた。クリスマスらしくサンタの洋服でも用意できれば、一気に場の雰囲気も変わるのだが、あいにく料理にお金をつぎ込んでしまい準備はできなかった。
「う、うーん」
 頭を抱えたその時だ、玄関のチャイムが鳴った、紗玖耶だ。無い物は仕方がない、悩む前に今は紗玖耶を歓迎するのが先である。ルローナは明るい笑みで扉を開き、紗玖耶を招き入れるのだった。
「メリークリスマス♪ お招きありがと〜♪」
「メリークリスマス♪ 中へどうぞ」
 微笑む紗玖耶。きっと急いで来たのだろう、少し息があがっているようだった。
「間に合ってよかった。ルローナちゃん、実はこんなの準備したんだけど……」
 紗玖耶がバックから取り出したのは1着の可愛らしいサンタ服であった。
「ルローナちゃんとお揃いで着たいと思って、前からこつこつ縫ってたの♪」 
 そう言って紗玖耶は上着を脱ぐと、お揃いのサンタ服が現れる。さすが何でもできる紗玖耶である。
「バッチリ可愛くできたと思うんだけど、どうかな?」
「わぁ、とっても素敵なのです♪ 丁度こういうのが欲しかったのですよ、ありがとう」
 良かったと安堵する紗玖耶に、次は私からとテーブルへ案内するルローナ。
「わ〜、凄〜い!!」
 そこに広がるはルローナの作った料理の数々である。
「美味しそう、ありがとね〜♪」
 ルローナもサンタ服へと着替えると席に着く。さっそく2人はケーキを食べることにしたようだ。
「「いただきます」」
 紗玖耶は切り取ったケーキを満面の笑みで口に運ぶと、そのままカチンコチンに固まってしまった。顔には若干、汗が浮かんでいる。
「どうしました?」
「……にょ」
 尋常ではない紗玖耶の様子に、あわててルローナもケーキを味見する。
「お……お砂糖とお塩を間違っちゃったみたいですっ」
 そうなのだ。見た目はとても素晴らしいが肝心の味がしょっぱかった。何はともあれ、可愛いサンタ服。不思議な味のケーキ。2人の個性が素晴らしく出たクリスマスであった。



イラストレーター名:乱翠