●『ハートフルキッチン』
今日はクリスマス。つかさと楓にとっては三回目のクリスマスになる。しかし、今年のクリスマスはいつもの過ごし方とは少し違っていた。 何しろ、テーブルの上には様々な料理が並び、今もつかさと楓で協力して料理を作っているのだ。もちろん、二人のためだけではなく、クリスマスパーティに招待する皆のため。 一昨年は二人で外食、去年は二人で温泉と、二人きりで過ごすクリスマスは二年続けて満喫してきた。三年目になっても、相変わらずラブラブには違いない。けれど、さすがに三回目のクリスマスを迎える付き合いともなると、ふたりでイチャイチャラブラブしてるばかりではなく。血縁・親族や、普段仲良くしている結社等の友達などなど……ある種大家族的な集まりで楽しむクリスマスも良いなぁと話し合って決めたのだった。 だから、今日は盛大なパーティ。二人とも準備に追われていたが、その顔は輝いていた。大切な恋人と一緒だから、それに来る人々の笑顔を思うとこちらも笑顔になれるから。 そうして、冬の陽が傾きかける頃。準備もそろそろ終盤にさしかかり、あとは最後の仕上げを残すのみとなっていた。 「みんな、あと一時間もしないで来る頃かな?」 クリームシチューの仕上げをしながら、楓が時計をちらりと見る。 「榧ちゃんからさっき電話があって、今からこっちに向かうって」 ポテトサラダを大皿に盛りつけながら、つかさが答える。 「了解、と。それじゃあ、私達も仕上げないとね」 そう言って、楓が小皿でシチューの味見をした。 「うん、美味しい♪」 会心の出来と微笑む楓。 「こっちもOK。ボクも一口貰える?」 ポテトサラダを盛りつけ終わったつかさも、どうぞ、と差し出された小皿を受け取り、一口。 「どうかな?」 楓の問いに、OKサインを出して、 「うん、美味しいよ」 と笑顔で答える。
やがて玄関から、 「ただいまー」 「お邪魔しまーす」 などのと声が聞こえてきた。微笑みあい、どちらからともなく手をとりあい玄関に向かう二人。 今年のクリスマスも、二人にとって大切な一ページになるだろう。
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