●『White Christmas』
「わわ、雪だよ……!!」 空から舞い降りる雪を見て、恭一は思わず歓声をあげた。 義姉に続いて秀一郎が空を見上げると、ひとつ、またひとつと、柔らかい雪が降るのが見える。 仲の良い義姉弟である二人が、初めて一緒に出かけたクリスマスの夜。今まで、こうやって誰かとお出かけするということがなかったから、恭一は素直に嬉しく思う。誘ってくれてありがとう、という言葉も、自然に出た。 俺も姉さまと出かけられて嬉しいのです、と恭一に答えて、秀一郎は思う。貰ったプレゼントも、もちろん嬉しいけれど。何よりも一番嬉しいのは、大好きな義姉と一緒にいられること。 両の腕を伸ばし、恭一が雪を手に掴もうとする。掌の上にふわり舞い降りた雪の結晶は、すぐに溶けてしまうけれど。 「――どうしてか、掴みたくなっちゃうんだよね」 そう言って手を伸ばし続ける義姉を見ていると、なんだか自分まで楽しくなる。表情をほころばせて、秀一郎も雪を掴もうと手を伸ばした。 「雪見てはしゃぐのは子供っぽいかな?」 「こんな時くらい、はしゃがなくちゃ損ですよっ」 自分に言い聞かせるように恭一が小さく笑えば、秀一郎の屈託ない笑顔が向けられる。そのまま、二人はしばし雪との戯れを楽しんだ。 雪の降る夜の公園は寒いけれど、体も心も今はそれ以上に温かくて。恭一は、義弟が贈ってくれた白いマフラーに顔を埋める。 「はふ。マフラー、温かいね」 頭上に降る雪と同じ色をした、柔らかいマフラー。その温かさを堪能する恭一を見て、秀一郎が控えめに苦笑した。 「……お揃いみたいになっちゃいましたね」 自分で贈っておいて、こう言うのも何なのだけれど。秀一郎が義姉に贈ったマフラーは、確かに彼がしているものとよく似ていた。お揃いを意識してしまって、少し恥ずかしいけれど。 (「――でも、よく似合ってる」) 一方で、恭一も複雑な想いに揺れる。何から何まで、義弟に貰うばかりな気がして――伝えきれないほど感謝すると同時に、何も出来ない、してあげられない自分がすごく、申し訳なくなる。 そんな気持ちを義弟に悟られないよう、わずかに俯いた恭一が、ごめんね、と心の中で呟いた時、秀一郎がふと口を開いた。 「姉さま、あのね」 はっと顔を上げた恭一に向け、秀一郎がにっこりと笑う。 伝えたい想いは、素直に口をついて出た。 「――いつも、ありがとう」 恭一が、目を見開いて秀一郎を見た。色々な想いが溢れてしまって、逆に言葉が出てこない。 「さあ、次はどこに行きますか? 今日はいっぱい遊びましょう!」 柔らかく降る雪の中、秀一郎の温かな笑顔が、恭一の目にとても輝いて見えた。
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