●『ユキネとフラン-お菓子Party!…の前に大掃除!』
クリスマス当日。 特定の予定もなく、今日は家で一人きりだと思っていたフランレーゼは、自由気ままに部屋の中で時間を過ごしていた。 そんな時に、一人の来訪者が現れる。 「フランさん、メリークリ……ス、ま……!!」 呼び鈴の音に玄関の扉を開ければ、その先にいたのはサンタの格好をした友人の姿。 元気良く挨拶をされたかと思えば、その言葉は途中で途切れがちになり、その後は口を開いたまま絶句していた。 「……ゆ、雪祢しゃん!? なんで、突然!」 迎えた側のフランレーゼが、驚きの言葉を放つ。 だが、目の前の雪祢の視線の先と彼女の表情を見て、たらりと汗を流した。 フランレーゼの部屋の中は、散らかったままだったのだ。来客があるとも予想すらしていなかったので、片付けもせずにごろごろとしていた結果、雪祢にその惨状を見られてしまったのである。 「……いや、えと……今日は一人だと思って……」 へへ、とフランレーゼが笑いながらそう言う。 すると雪祢は困ったような表情をしつつも笑みを浮かべて、軽くため息をこぼした。 「まぁ、驚かせるために黙ってきたんだけど……まずは、お片づけからね!」 雪祢はそういって、フランレーゼの部屋に入り込む。お菓子を詰め込んだ袋とケーキの箱を空いてるスペースに寄せて、彼女はテキパキと部屋の掃除を開始した。 「……え? 片付けてくれるの……?」 そんな彼女の行動にポカンとするのは部屋の主であるフランレーゼだった。 部屋の中の状態で、雪祢は呆れて帰ってしまうと思っていただけに、あたふたとしてしまう。 目の前で手際よく動く彼女に対して、自分も何かしなくてはと思うのだが、かえって邪魔になりそうだと感じて、部屋の隅でじっとする。 「一家に一人、雪祢さんの時代が来そうだ」 そんな言葉が、ぽろりと零れる。 雪祢の素早い行動に、心の底から感心しているのだ。 一つひとつ、丁寧ながらもポンポンと部屋の中を綺麗にしていく雪祢。床に転がっている奇妙なハニワの置物には、眉根を寄せて難しい表情を向けていた。 そして、あっという間にフランレーゼの部屋は片付けられていった。
「メリークリスマス、フランさん!」 「メリークリスマス、雪祢さん!」 すっかり綺麗になった部屋の中で、二人がそんな言葉を交わす。 テーブルの上には雪祢が持ち込んだたくさんのお菓子と、丸太をイメージしたクリスマスケーキが並ぶ。 パーティ当日に大掃除という予想外な展開から始まった時間。だが、それでも良い思い出となるだろう。 こんなクリスマスもたまにはいいかなと、素敵な時間を提供してくれた雪祢に感謝しつつ、フランレーゼは甘いお菓子を口にしながらそう思うのであった。
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