●『煌めく聖夜の街で』
クリスマスイブの都心の夜。街はイルミネーションが煌き、さながら地上にあるもう一つの星空のよう。そんな中を来海と信乃の二人は歩いていく。デートにはまさにうってつけだろう。一緒に食事を楽しんだり、プレゼントを買ったりしているうちに、すっかり日も落ちてしまったのだが、かえって良いムードになってくれた。 「噂には聞いてたけど綺麗ね……ここのイルミネーション」 「すっげー……! ホント、来て良かった。来海ちゃんと一緒なのが、更に嬉しい……かな」 雑踏は二人の耳からシャットアウトされ、静かにイルミネーションを眺める、完全に良いムード。 ……しかし、このまま時間が過ぎてはくれなかった。不意にムードを無視した音楽が流れ、ついそちらに意識が向いてしまう……来海の携帯の着信メロディーだった。 来海が出てみると、父からの電話だった。 「あ、お父さん? うん、今お買いもの中。信乃君も一緒。え、そんな……悪いって……そ、そう? わかったわ」 一通り話を終えて電話を切ると、その横で信乃は固まっていた。そしてはっと我に返ると今度は一挙に慌てだす。 「おおおおおお父さん!? な、何て?」 いくらなんでも慌てすぎである。 「信乃君にちゃんと家まで送ってもらえって……ついでに食事もして行って、だって……うちに来てほしいって素直に言えばいいのに……全く」 苦笑気味に言う来海。素直じゃない父に呆れつつも、家族が信乃を慕っているのは、やはり嬉しい。 「あ、ああ、勿論送るよ……でも、せっかくのクリスマスにお邪魔しちゃっていいのかなぁ?」 「うん、よかったら寄って行って。妹達も喜ぶと思うわ」 来海の家に向かう二人。着いてからは、信乃を交えての楽しいパーティーの時間だ。気が付けば、まるで家族のよう……。 もしかしたら、本当に『家族』になる日が来るかもしれない。そう考えると、嬉しいような、何だか恥ずかしいような、そんな気分になる来海であった。
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