●『貴女と迎える、Merry Christmas』
蝋燭の燭台で照らされた白いテーブルクロスの上に、華かな彩りの料理が次々と運ばれてきた。高校生と中学生の食事には少し豪勢すぎる内容。 しかし今宵は特別の夜。 それを咎めるような無粋な者などいるはずもない――。 料理が並び終えるのを待ち、真琴は飲み物の入ったグラスを片手で持ち上げた。 「出会ってから3回目のクリスマスに……かな」 「ふふ、そうですね」 真琴の正面に座る静は、彼の言葉にこれまでの二人の歴史を思いながら微笑を浮かべ、同じくグラスを片手にとった。 「乾杯っ」 二つのグラスが、テーブルの上で重なり音を響かせる。 瞬間、二人は互いを見つめあい、幸福に満ちた笑顔を浮かべ、それから互いに飲み物を口にした。 「わ……とっても美味しいですね」 スパークリングのドリンクは勿論ノンアルコールだけど、少し大人びた味がするように思えて――。 続けて豪華な料理も口にしてみる。驚くくらいにどの料理もとても美味しい。 満足しているのが伝わったのか、真琴は、大人びた笑みを浮かべながら優しく静に告げた。 「ん、口に合うようで良かった♪」 「とっても美味しいですね」 勿論、料理も飲み物も最高に美味しくて幸せなのだけど。 それよりも、食事を共に出来る相手が、一番大好きな人というのが最高に幸せな気分にさせてくれるに違いない。
食事もひと通り食べ終えた頃、真琴は彼女に大切な話を切り出すことを決めた。 「あのね、静に渡したい物があるの」 告げながら、彼は銀色の鍵をテーブルの上に置いた。 静は鍵を見つめ、きょとんとした仕草で問いかけてくる。 「これは……鍵、ですか?」 「うん」 真琴は微笑み、それから小さく息を吸って、ゆっくり話し始めた。 「私、学園を卒業したら、実家を出てアパートで暮らす予定なの」 話しながら相手の様子を眺める。静は真剣に聞いていた。 彼女はどう思うだろう……。微かな不安が胸をよぎる。しかし、勇気を出して真琴は彼女に告げた。 「それで……ね。良かったら、私と一緒に暮らさない?」 「……暮らす?」 静は告げられた言葉を飲み込むように、ぽつりと繰り返し、それからじっと鍵を見つめた。……そのまま俯き、暫し黙り込む。 その様子に真琴も若干不安が増して、「無理にとは言わないよ」と告げようとした時だ。 「とっても嬉しいです!」 顔を上げた彼女は、満面の笑みを浮かべていた。 普段には見られない程の輝かしい笑顔。真琴の不安は一瞬で払拭された。 「……喜んで、お受け致します」 嬉しさと喜びで頬を染め、少し恥ずかしそうに微笑む彼女。 彼もまたその彼女を最高の微笑で見つめ返すのだった。
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