●『ツンデレサンタのプレゼント』
クリスマスの夜にサンタが訪れるのは、子供たちのいる家に限った話ではない。愛し合う二人のところにも、ちゃんとサンタはいるのだ。 中には、少し風変わりなサンタもいたりするが……。
「め……メリークリスマス、よ」 「――よっ、メリークリスマ……ス」 華鈴の声に振り向いたジョーズは、挨拶を言い終える前にその場で固まってしまった。彼の視線は、姿を現した華鈴の姿に釘付けで。 (「やべぇ……可愛い」) 華鈴が身に纏っているのは、リボンとレースをあしらったサンタの衣装。普通のサンタとの大きな違いは、肌を覆う布地が少ないことと、可愛いケモノ耳としっぽが追加されていることだろうか。 「……何よその目は?」 「いや、普通に可愛いなって見てるだけだぜ?」 彼が腰掛けたベッドに歩み寄り、上目遣いで睨む華鈴に、弁解するようにジョーズが言う。一向に逸らされない彼の視線に耐えかねたように、華鈴が声を張り上げた。 「私だって好きでこんなカッコしてるワケじゃないの! あの子がやれって言うから仕方なく着てるだけであって……」 早口でまくしたてながら、ジョーズの顔を見て一瞬だけ言いよどむ。 「だからその……べ、別にアンタのためとか、そんなんじゃないんだからねっ!?」 そう言い切って、彼の視線から逃れるようにプイと目を逸らす。 「分かってるって、ありがと……本当に可愛いぜ?」 そんな華鈴が愛しくて、ジョーズは笑って彼女の頭を撫でた。 しばし撫でられた後、華鈴がジョーズを見上げて囁く。 「……ねぇ、寒い」 「ああ、うん、寒いな」 部屋の暖房はつけてるけど、と続けるジョーズに、華鈴の表情がみるみる不機嫌になった。 「……あのね、私が何を言いたいかぐらい察しなさいよ」 拗ねたように横を向き、頬を染める華鈴。 「抱きしめて暖めて欲しい、って言ってるの。分かったならさっさとする!」 華鈴を包むように抱きながら、ジョーズは内心で苦笑する。抱きしめて欲しいなら、素直に言ってくれればいいのに。 (「まぁ、そんなところも可愛らしいからいいけどな♪」) 愛しさで、彼女を抱く両腕に力がこもる。 「……ん、やればできるじゃない。よくできました」 ジョーズに身を預けて温もりを受け取った後、機嫌を直した華鈴が言う。 「一応サンタだもの、プレゼントあげなくちゃね。はいコレ」 「サンキュ……」 差し出しされたプレゼントを受け取り、微笑むジョーズ。俺からも後で渡すぜ、と言う彼に、華鈴が顔を近付けた。 「ついでに、もうひとつプレゼントよ――」 囁きとともに、二人の唇がそっと重なる。 「愛してるわ、ジョーズ」 「俺も愛してるぜ、レイン」 甘い口付けと、互いの耳元で交わされる言葉。 「こんな私でよければ……これからもよろしくね」 よろしく、と頷いたジョーズの視線が、熱い。 「この長い夜は、まだ終わってないぜ。たっぷり可愛がってやるよ……」 二人の夜は、始まったばかりだ。
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