●『どっちがプレゼント?』
聖なる夜。静かな夜。 世界中が聖なる空気に包まれ、幸せな顔の溢れる日。
章と華乃歌は、赤と黒――まるで章の髪のような色を基調として、クリスマス風に装飾された章の部屋にいた。 聖なるクリスマスと同時に、華乃歌の誕生日でもある。 正確には、華乃歌の生まれた日ではなく、拾われた日が誕生日ということになっているのだが。 それでも、華乃歌が拾われて銀誓館学園に入学しなければ章とも出会う事はなく、『神城・華乃歌』として生まれた大切な誕生日なのだ。 「……ちょっと……まってて……」 華乃歌が、何か荷物を持って、一度部屋の外に出て行く。 その間、章は部屋でベッドに腰掛けて、大人しく待っていた。華乃歌が何をしてくれるんだろうと、期待に胸を躍らせて。 (「……よろこんで、くれるかな……」) 華乃歌は、部屋の外で着替え、わくわくしながらドアノブに手をかけた。手には章へのクリスマスプレゼントを大事そうに抱えて。 扉を開けて飛び込んできた華乃歌を見て、章は軽く目を見開いて驚く。 (「か、可愛い……」) ――白いウサ耳をつけた、可愛いミニスカートのサンタクロースがいたのだ。 思わず章は飛び込んできた華乃歌を抱きしめ、 「俺がプレゼントで……」 優しく微笑む章の口から甘い声と言葉が、華乃歌をふわりと包む。そのまま優しく唇が重ねられた。 華乃歌は真っ赤になりながらも、こくりと頷いて、そのプレゼントを受け取った。 「大好きだよ」 「……かの、も……しょう……だいすき」 再び重なる唇。 「メリークリスマス」 「メリー……クリスマス……♪」 章が華乃歌を優しく抱きしめ、華乃歌が章の背に手を回して抱き合う。 華乃歌にとっては、赤と黒が基調になっている部屋全体も章を思わせて、二重に抱きしめられているような幸福感を与えてくれた。 「そして……誕生日おめでとう」 優しい声が華乃歌の頭上から降り注ぐ。 聖なるクリスマス、そして『神城・華乃歌』として生まれた誕生日。 「……あり、がとう……」 本当に嬉しそうに、幸せそうに、華乃歌は章の腕の中で微笑む。目尻には雫は光らせながら。 直接見えはしないが、腕の中で華乃歌が本当に幸せそうにしているのが、伝わる体温と纏う空気で章に伝わった。
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