●『聖なる夜、ヤドリギの下で』
「楽しかったねー♪」 「そうッスね」 八重と真希が初めて二人で過ごすクリスマス。今日は学園のクリスマスイベントにも一緒に参加して、凄く楽しくて、たくさん笑って。 そんな帰り道でも二人の笑顔は絶える事なく、参加したイベントの事をあれやこれやと楽しくおしゃべりに花を咲かせる。 オーナメントやリースで飾り付けられた大きなツリーが二人の目に飛び込んできた。 「綺麗ー……」 八重がツリーに近付いて、見上げながら、感嘆の声を漏らす。 「あ、あそこ!」 見上げた視線の先に何か見つけたらしい八重が、何かを指差して、瞳を輝かせた。 それはヤドリギのリース。しかも、『Masaki&Yae』と銀糸製のサインが入っている。 間違いない。先日、二人で一緒に取ったヤドリギで作ったリースだ。 一緒にヤドリギを取りに行って、一緒にリースにして、それが飾られたツリーを一緒に見られるなんて、なんて素敵な事なのだろうか。 「ね、ほら、あそこ!」 それが嬉しくて、はしゃぎながら真希に示そうと振り返ると、 ――ぽすん。 「わ! ……?」 八重の頭に何かが載った。 何だろうと頭に手を伸ばして、その何かをそっと取ってみると、小さな月桂冠の様な――ヤドリギの冠。 「自分の……勝利の女神に、ッス」 ぼそっと恥ずかしそうに言って、そっぽを向いた真希は真っ赤になっている。 真希の不器用な優しさが嬉しくてしょうがない八重は、 「………えへ。まったくもうっー!」 ヤドリギの冠を、再び自分の頭にちょこんと乗せ、真希の腕に自分の腕を絡め、思いっきりくっついた。 「あ、あの! や、八重サン! そ、その! あ、あの!!」 真希は、突然八重に密着されて、元々真っ赤だった顔が、頭から湯気でも出るのではないかというくらい、更に赤くなる。 あまりにも動揺しすぎて、自分でも何を言っているのか分かっていない。何を言えばいいかも分からない。 「あ……その……えと……」 八重は、そんな真っ赤で、しどろもどろな真希に、にっこり微笑んで、ツリーを見上げた。真希もつられるようにしてツリーを見上げる。 (「初めての二人のクリスマス。まだ始まったばかりの二人の物語。期待も、不安もあるけれど、きっとステキなことが待っている」) そんな確信めいた想いに、八重は胸を高鳴らせ、真希は八重の横顔に見惚れていた。
大好きな人と並んで歩く帰り道は、いつもより少し歩く速度を落として……。 1秒でも長く一緒に居たいから――。
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