●『聖夜、貴方に贈る言葉は…。』
人々がごった返し、賑やかな音楽が鳴り響く。街はクリスマスムード一色に染まっていた。 そんな町の一角で、クリスマスプレゼントを交換しようと待ち合わせたエフェクトと文だったが、想像以上に騒がしい聖夜の様子に、二人は思わず苦笑するしかなかった。 「あ……」 ふと、文は、ショーウィンドーに飾られたカラフルなイルミネーションを、眩しそうに見上げた。 光に包み込まれて、まるで幻想的な世界にいるようだった。そのまま、隣のエフェクトに視線を移す。 本当に夢のようだと思う。 文は、エフェクトの腕に手を絡める。二人は石畳をゆっくりと歩き始めた。 やがて、いつしか人ごみが途切れ、遠くから流れるロマンチックなクリスマスソングだけが二人を包んだ。 「私が今日まで無事なのは、あの日の約束を守ってくれたから……ありがとうなのですよ」 文は、目を閉じてぽつりと呟いた。 突然の事に少し驚いた様子だったが、エフェクトは正直に答える。 「……気にするな、望んだことだ」 実際エフェクトは、そう望んだ。たぶん文よりも強く。 「……私はここに来て、大切な人、大切な物がたくさん出来ました」 文は、そんなエフェクトの気持ちを知るはずもなく、感謝に満ちた表情で語り出す。 「だけど……失いたくないほど大切な人……いいえ、愛する人は貴方だけ、なのですよ。貴方が私を守ってくれるように……私も、貴方の傷を癒し続けたいのですよ」 突然立ち止まる文。そして、エフェクトの瞳をじっと見つめ問う。ほんの少しだけ不安そうな表情で。 「……大好きですよ、貴方は?」 「……無論我も大好きだ」 頬を染めながらもエフェクトは、しっかりと力強く宣言した。 文も耳まで真っ赤になりながら、それまでよりも強くエフェクトの腕に抱きつく。 「……ん」 「……」 二人とも恥じらいながらも幸せに満ちた顔で微笑みあった瞬間、祝福するかのように空から真っ白な雪が降り始める。 そしてエフェクトも文も同じ想いを胸に、ひらひらと舞い落ちる雪の中を無言のまま歩きはじめた。
きっと、どんな困難も乗り越えられる。二人なら──。
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