●『Be for you, be for me.』
「今日はとびっきりの料理、ご馳走しちゃいますから」 一緒にヤドリギのリースを作り、準備万端で迎えたクリスマス当日。 今年も学園でのパーティを満喫した二人が、手を繋いで向かった先は風音の部屋。 次々に食卓を彩っていく料理と少女の手際に、風音は感嘆するばかりだ。 「さぁ、完成ですよ♪」 メインの乗った大皿をテーブルに置きつつ、白髏が弾んだ声をあげる。 「これは……本当においしそうだ」 年に一度の特別なディナーは、二人の満面の笑顔から始まった。 といっても、現在幸せの絶頂にある二人は常に笑顔を浮かべていたりするのだが。 弾む会話。 最愛の少女の絶品の手料理を味わいながら、楽しく賑やかな一時を過ごす。 「――ちょっと待っていて下さいね」 食後のコーヒーの香りと余韻を楽しむ中、先程から少しそわそわしていた白髏が席を外す。 「メリークリスマス! 貴方のサンタがやってきましたよ♪」 少女は、風音が少し心配になってきた頃を見計らったように戻ってきた。 ……言葉通り、サンタクロース風のドレス衣装に身を包んで。 「聞かせてください。あなたが今一番欲しいものは何ですか?」 突然の展開に驚いている風音に、白髏は全開の笑顔で問いかける。 「難しいなあ」 小さく首を傾けて覗き込んでくる少女に、少年は悩むようなポーズをとって言葉を切り。 「だって……」 「わっ!?」 次の瞬間、白髏の体をふわりとお姫様抱っこに抱き上げる。 「一番欲しいものは、もうここにあるんだから」 優しく微笑みながら、愛しさを込めて囁くように言葉を紡く。 「っ、サンタそのものが欲しいとは、欲張りですね」 白髏は困ったように呟いて、やわらかな笑みを浮かべつつ抱きしめる様に風音の首に手を回す。 「なら、クリスマスが終わっても絶対に離さないでくださいね」 「もちろん。そう望んでくれるなら尚更、ね」 少年はゆっくりと抱き返す。 静かな部屋の中で、お互いの鼓動とぬくもりがしみ込むように伝わってくる。 幸せな時間は終わらない。 そう、二人がそれを望むのならば。
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