●『聖夜も変わらぬ笑顔で』
凍える冬の夜、イルミネーションが輝く街に大河と光輝の姿があった。家族連れやカップルで混みあう中、お互い離れ離れにならぬよう服の端を掴む。 「今日はやけに人が多いな!」 「さすがクリスマスが近いだけあるね!」 つかの間の沈黙の後、2人は顔を見合わせる。 「そういえばクリスマス・イヴって何日だっけ?」 「12月24日!」 「今日、何日だっけ?」 「……12月24日」 みるみる変わる顔色。暫くの沈黙の後、2人はまったく同じポーズで、しまったとばかりに頭を抱える。 「そ……そういえば友達がプレゼントを買いに行くとかなんとか言っていたような……」 「うっかり……してたね」 クリスマスをすっかり忘れていた大河と光輝は、いつも通りの1日を過ごしてしまった。何もクリスマスらしい事をしていなかったは2人は、大イベントを逃してしまったとショックを受けるのであった。 「で、でもまだ間に合うよ! 2人でクリスマス祝っちゃおう?」 「祝うってどこで?」 「そこのレストランでなんてどうかな?」 きょろきょろと辺りを見まわした末に、光輝は可愛らしいクリスマスの飾りつけがされたレストランを指差した。立て看板には『ケーキとドリンクのセットあります』とある。 「クリスマスと言えばケーキだよ! 今からでも遅くない、行こう!」 店内に入ると暖かい空気が2人を包み込んだ。暖房が効いているのだろう。お客の気配を感じ、駆けつけた店員へ光輝は2人であるとジェスチャーをすると、すぐさま窓際の席へと通される。頼むはもちろん、立て看板にもあったケーキとドリンクのセットだ。目的の物は、注文してすぐに2人の前へと運ばれてきた。2人の頼んだケーキはどちらも美味しそうだ。 「じゃ、さっそく乾杯しよっか!」 「ああ、って……おい、外を見てみろよ!」 大河の声に、光輝も窓の外へと視線を向けると、そこには白いものが舞っていた。 「雪だ……!」 「ホワイトクリスマスだな!」 「クリスマスに雪だなんてロマンチックだね!」 しばし雪に見とれてから、ふふっと顔を合わせ微笑み合う2人。本日がクリスマスだと思い出した時は、真っ青になったものの、これもかけがえのない思い出の1つとなる事だろう。 「じゃぁ、改めて!」 「うん、メリークリスマス!」 元気よくグラスを掲げ、互いのグラスをぶつけると、カチンという軽い音が響いた。
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