香坂・弓弦 & 真月・マサト

●『Come with me !』

 12月24日、クリスマスイブ。真っ暗な夜空を、ちらりちらりと綿雪が舞い落ちる。イルミネーションで彩られた街のかたわらには、何人かの男女の連れ添いが見られた。
(「失敗したなぁ」)
 その一角。イルミネーションを見上げながら、心の中で呟く弓弦。弓弦は、一歩後ろを歩く少年、マサトと一緒にクリスマスツリーを見に行く所だ。それなのに、うっかり手袋を忘れてしまったのである。先ほどからしきりに手をこすり合わせたり、手の甲をさすったりしているが、きめ細やかで真っ白な指は、凍えて冷たくなっている。冬の夜は冷えるのに。
「はあ」
 弓弦が小さくうつむいたその時、ぽん、と肩に何かが触れる。振り返れば、柔らかく微笑んだマサトが、弓弦に自分の手袋を差し出していた。
「香坂さん、これよかったら使ってください」
「え? いえ、大丈夫ですよ。マサトくんが寒くなりますし」
 しかし、弓弦のほうも素直に受け取れない。渡された手袋をマサトのほうに押し返す。
「でも香坂さん、手が冷たそうですし」
 マサトも弓弦が心配で、そう簡単に引く事もない。そうやって押し問答していると、この状況に先に音を上げたのは弓弦だった。
「なら半分こにすればいいんですよ! も、もう片方は……こうやって!」
 理由に困って、とっさに手を伸ばしてマサトの手を掴んだ。二人の肌が、直接ふれ合う。
「繋いどけば暖かいんじゃないですか!」
「あ、あぅ……そ、そう、ですね」
 突然の行動に、マサトの頬も、寒さ以外の理由で赤く染まる。手を伸ばした弓弦も、つい黙り込んでしまった。
(「香坂さんの手、やわらかいな……」)
 不意に触れた少女の手のやわらかさに、心臓がとくんと跳ねた。近頃なんだか、妙に彼女の事が気になっている。何故そうなるのか、まだ心の整理がついていないマサト。
(「マサトくんの手、思ってたよりおっきいんだ」)
 想像していたよりも大きい、暖かく包み込むような『友人』の手に、ぽっと頬が赤く染まる。静かに雪が降りしきる中、二人はお互い見つめあい……同時に噴き出してしまった。
「手、やっぱり冷たくなってますよ」
「心があたたかい証拠です。……行きましょう!」
 少しの間笑いあってみれば、今までの気まずさも何処へやら。お互い少しだけ気恥ずかしい気持ちを残しながら、また二人で歩き始める。ほんの少し、お互いの変化を感じ取りながら。

 そのうちに、高くそびえる木が闇夜に浮かび上がった。
「あ、あれじゃないですか!」
 真っ先に見つけた弓弦が、マサトを引っ張って駆け出していく。引きずられるようについていくマサトの口元にも笑みが戻る。仲良しの二人は、遠目から見ても微笑ましくも見える。けれど、今日この日では、周りの人は少しだけ違う見方をするかもしれない。二人の手は、心と共に繋がれたままだった。



イラストレーター名:みろまる