●『虹が繋ぐ聖夜のぬくもり』
今日の天候は雪。つまり今夜はホワイトクリスマス。そんな、雪の降る日の帰り道の事。昼間引き取った猫のためのえさ等一式や、二人で過ごすためのクリスマスの買い物を済ませれば、すっかりと日も暮れてきてしまった。深々と降る雪の中を、二人仲良く相合傘。凍えるような空気も、二人の間では温まっていく。傘をさしたさつきの、空いた方の腕には和奈が抱きついている。共に歩く道はとても短く感じてしまうほど楽しい。 「そういえば……猫さんって、手料理とかもいいのかな?」 話の中身は、やっぱり昼間に拾った猫の事。隣を歩く和奈に、小さな疑問を投げかけるさつき。他愛の無い会話が楽しいのも、お互い相手が好きだからこそ。 (「ずっと、ふたりだけの時間が続けばいいのになぁ」) 「大丈夫じゃない? ねこまんま、とかいうし」 さつきの顔を覗き込みながら、適当な言葉を探していく和奈。ねこまんまって、料理なの? なんて話をしながら、二人でくすくすと笑いあう。待たせている子猫の事は二人とも心配だけど……一緒にいる貴重な時間を大事にしたいと、二人とも同じ事を考えていて。自然と歩みはスローテンポになっていく。 そういえば、とさつきが切り出した。 「料理といえば……和奈さん、今日の晩御飯、何かリクエストはある?」 「え、リクエストしていいの? そうだなあ……」 さつきは、あれこれと好きなものを思い浮かべながら目を輝かせる和奈を、優しげに微笑みながら見つめる。 「腕によりを掛けて作っちゃうんだから」 不意に、お腹が鳴る小さな音がした。和奈の頬が、寒さ以外の原因で桃色に染まる。 「うう、お料理の話してたら、おなか減ってきたかも。え、っと。なんでもいいならチキンが食べたいな。クリスマスだしね。子猫さんとクロくんにも分けてあげよ♪」 猫と使役のケットシーくんの事も忘れずに。 「夜は長いけど有限だから……沢山の思い出を二人で詰め込もう?」 さつきの提案に、照れながら頷いて返す和奈。わずかな沈黙が流れ、二人とも顔を逸らして前を見れば。綺麗に飾られたもみの木が、二人を出迎えるように立っていた。 「わぁ……」 どちらからともなく、感嘆のため息が漏れる。しばらく二人ともが足を止めて、クリスマスツリーに見入ってしまった。 「ねえ、和奈さん」 腕に抱きつく和奈の手に、自分の手をそっと重ねる。 「なに? さつきちゃん」 「七色に光るイルミネーションがまるで虹みたい」 「うん。 こんなとこで虹見つけられて……一緒に見られるのって、幸せかも」 高く伸びるクリスマスツリーを見上げ、二人そっと寄り添って。 「来年もまた、一緒に見たいね♪」 元気に笑いかける和奈。 「うん、来年も再来年も。ずっと一緒に見ようね」 しっとりと微笑むさつき。 願わくは永久に、二人で共にあらんことを。もみの木を見上げながら、二人は思いを重ねた。
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