●『クリスマスのプレゼント』
太陽が西の空に沈みゆき、聖なる夜が訪れようと月が東の空に顔を出し始める夕暮れ時。 学校が終わったら一緒にクリスマスを楽しもうね、という約束をして、待ち合わせ場所の公園に早く着きすぎてしまったりのあは、手にしたプレゼントを見ては顔が綻ぶ。 (「これを渡したら、ご主人様は喜んでくれるでしょうか……。いや、どんな風に喜んでくれるでしょう」) 誰よりも大切な主の喜ぶ姿を思い浮かべては、顔が幸せそうに綻んだ。 その時、ティリナが前方から歩いてくるのが見えた。 ティリナに気付き、ゆっくりと彼女に歩み寄るりのあ。そのりのあに気付き、嬉しそうに駆け出してきたティリナ。 「ふぁ、にゃ、にゃ!」 「あ……!」 走り出して、特に何か障害物があるわけでもなく、平淡な地面にも関わらず躓いて転びそうにティリナに、りのあは慌てる。 転ばせてはいけない。ティリナが痛い思いをするのも、転んで服を汚してしまうのも、それで悲しそうな顔をするのも、何もかも見たくない。彼女には、ただ幸せに笑っていて欲しい。 「ご主人様……!!」 彼女が転ぶ前に抱きとめよう、もし上手く抱きとめられなくても自分が彼女の下敷きになればいい、そんな思いで慌てて駆け寄ったりのあ。 そんな主思いの彼女を待っていたのは――。 「!?」 「〜〜〜〜〜〜っ」 二人を同時に襲う衝撃。痛そうな音もしなければ、痛みもなく。あるのは、唇が感じる柔らかい感触。 二人の唇が正面衝突事故を起こしていた。 真っ赤になって即座に離れる二人。お互いに心臓が飛び出しそうなくらいにドキドキして、相手の顔が見られない。 (「りのあさんの……唇が……」) (「ご主人様……柔らかかった……」) 二人とも真っ赤な顔で、同時にお互いをちらりと見て。 「……」 「……」 目が合ったことで、頭から湯気でも出ているのではないかというくらい真っ赤に沸騰した。二人とも必死に言葉を探す。 「りのあ……さん。その……メ、メリークリスマス」 最初に口を開いたのはティリアだった。照れくさそうにしながら、にこっと微笑む。 「メリークリスマス、ご主人様」 そのティリアの可愛らしい微笑みを見て、りのあも柔らかく微笑み返した。
聖夜を待ちわびる天使が悪戯をした可愛らしいハプニングは、素敵なクリスマスプレゼント――。
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