●『楽しいクリスマス♪…楽しい…?』
「あ、いずみいらっしゃーい!」 「……」 二人で過ごすクリスマスパーティ。笑顔で迎える勇気に、泉は無表情のままにぺこりと頭を下げた。 「今日はクリスマス……折角なんでサンタの衣装でパーティだよね?」 そう言って泉の方に向き直る勇気。勇気はその言葉の通りサンタの衣装を身にまとっているが、泉は制服のままだ。その表情もどこか固い……いや、泉が無表情なのはいつものことであるが。 「なんか緊張してる?」 勇気がその表情に隠された緊張を読み取った。 「まぁ……普段から二人っきりでいることはありますが……なんか緊張しますね」 そこは素直に認める泉。クリスマスというある種特別な日だから、同じ二人っきりでも、いつもと違う緊張感を感じてしまう。 「もー気楽に楽しもうよ?」 そんな泉に対し、勇気はいつもの明るさを崩さない。笑って、ほらほら、とクリスマスらしいご馳走が並べられたテーブルへと泉を誘う。泉もしずしずと勇気の隣に座った。 「はい、あーん?」 泉が来るな否や、ニコニコしながら泉の口元にケーキを運ぶ勇気。 「……って、食べさせてくれるんですか?」 緊張と気恥ずかしさで思わず突っ込んでしまう。 「もちろん♪ 何か問題でも?」 「……まぁ、食べるんですけれど……」 若干の気恥ずかしさは呑み込んで、恋人の好意に甘えることにする。 「あーん……」 口を開ける。と勇気が食べさせてくれる。 「どう、おいしい?」 「……うん」 かすかに頬を赤らめつつも頷く泉。よかったぁ、と勇気が顔をほころばせる。 「じゃぁ、もっと食べさせてあげるね♪」 嬉しそうに微笑みながら、はい、あーん、とさらにケーキを差し出す。泉もあーん、と黙々と食べていく。
「なんか楽しいよね、こういうクリスマス♪」 「……楽しい……?」 楽しいというか甘々というか……いや。勇気が楽しいというからには、楽しいんだろう。 「……うん」 無表情はそのままだけれど、しっかりと頷いて。
二人で楽しむクリスマスパーティの時間は、あっという間に過ぎていくのだった。
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