●『小さなサンタを愛でる夜』
「メリークリスマス、サクラ……」 紫煉がサクラの耳元で優しく囁く。 クリスマスにちなんでミニスカートにアレンジしたサンタ服を着たサクラははにかみ、返事の変わりに紫煉の腕を抱く力をほんの少し強くする。 2人はベッドの上に座っていた。 並んで座っているのではなく、紫煉は後ろからサクラに腕を回し、少女を膝に乗せている。 紫煉は幸せそうに腕の中の少女の温もりを感じ、猫のようにサクラの背中へ時々懐いていた。 「こう、してると……あったかいね……」 サクラは恥ずかしそうな微笑みを浮かべながらも、まわされた腕をぎゅっと握り後ろへ身体を預ける。 (「まさか……いたずら……してこないよね…」) ちらりと肩越しに見上げるサクラに、紫煉の口許が緩む。 (「……少しくらいなら、悪戯しても構わないよな」) 同時に浮かんだ……愛しさ故の……悪戯心を発揮して、サクラのわき腹を優しくなぞるように撫で、ミニスカートの裾を弄ると、さっとサクラの頬に朱が指した。 それでもサクラは紫煉の悪戯を嫌がる様子はなく、逆に紫煉を振り返り頬を赤らめて整った顔立ちを見つめる。 「キス……したい……な……」 「そう言われて……断るやつが居るわけないだろう?」 頬を撫で、抱き上げて向かい合わせに座ると軽く唇を啄む。 優しいキスに二人で笑う。サクラは腕を回して紫煉を抱き締め、聞こえるかどうかの小さな声で静かに言った。 「……これからも……ずっと……一緒だよ」 至近距離の囁きは紫煉の耳に吸い寄せられて優しく響く。 改めて互いの顔を見つめながら紫煉はもう一度サクラの唇を啄む。 「ああ、これからもずっと二人で……一緒にいような」 その言葉を閉じ込めるように三度目のキスをかわしながら、紫煉はサクラを抱き締めたまま楽しそうにベッドに寝転ぶ。 「さて……まだ夜は長いぜ……? 覚悟しとけよ?」 ミニスカートのサンタはとっておきの笑顔をプレゼントに、小さく頷いた。
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