●『特別な一夜 二人の聖夜』
銀誓館学園のクリスマスパーティーで互いの気持ちを確かめ合い、晴れて恋人同士になった悠理と映音は、イルミネーションが煌めきあう街の中を歩いていた。二人は腕を組み、この幸せな一時を噛み締めているようだ。 「悠理先輩、今日はとっても楽しかったですねー」 映音が自分よりも背の高い悠理の顔を見上げながらそう言った。喜びに満ちあふれたその顔を見て、悠理は思わず微笑んだ。 「ああ、そうだな。とても楽しかった」 「あのね悠理先輩。クリスマスって毎年来るものですけど、今年はいつもよりもとってもとーっても楽しかったんですー。どうしてだかわかりますかー?」 その問いに、悠理は首を捻る。どうして? と聞くと、映音はにこっと笑い答えた。 「先輩と今日一日、一緒に過ごせたからですよー。こんなに素敵なクリスマスは始めてですー」 「映音……。俺も、今日はとても楽しかったよ。映音と一緒に過ごせて、良かった」 そう言って映音の頭を優しく撫でる。その心地よさに、映音は悠理の腕をぎゅっと抱きしめた。 「こうしている間も、世界には私たちの力を必要としている人が大勢いるんですよね。でも、今日くらい、先輩とのこの時間を大切にしたいですー。何にも代え難いこの時を、私、ずっと忘れませんからね」 「ああ、俺も今日この日のこと、決して忘れない。そうだ映音、ちょっと目を瞑って」 「……?」 何かと思いながら、映音は言われた通りに目を瞑った。すると首にふわりと柔らかい感触を感じた。 「いいよ、目を開けて」 悠理先輩のその声に映音は目を開ける。ふわふわと手触りのよいストールが、映音の肩にかかっていた。 「先輩、これ……」 「俺からのクリスマスプレゼントだよ。メリークリスマス、映音。これからも宜しくな」 映音は目を丸くしながら悠理の事を見ていたが、やがて笑顔に変わり、思わず悠理に抱きついた。 「先輩、大好きですー! 本当に本当に、ありがとうございますー! 私、凄く嬉しい!」 「喜んでくれて良かった。映音、俺も大好きだ」 「これからもずっと、ずーっと一緒にいましょうね!」 「ああ、ずーっと一緒だ」 そう、この思いが続く限り、ふたりの愛は永遠に変わらない。クリスマスの白い雪が、二人の愛をずっと見守っていた。
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