●『※これはクリスマスケーキ(2人分)です』
付き合い始めてもう2年以上経つ双翼と佳奈芽。二人で迎えるクリスマスも3回目になる。今年のクリスマスも共に過ごせることに感謝しつつ、二人で部屋でのんびりと過ごすことにした。
佳奈芽の部屋で二人。ぬくぬくと炬燵に入りながら、ゆったりと二人の時を楽しむ。 ふとあ、そうだ、と声を上げて、佳奈芽が立ちあがった。 「今年は腕によりをかけてクリスマスケーキを作ったんです。今持ってきますね」 そう言っていそいそと台所に向かう佳奈芽。双翼も恋人作のクリスマスケーキに、(「どんなケーキだろう?」) とワクワクと想像を膨らませながら、彼女の後姿を見送った。
そして、 「お待たせしましたっ」 という声とともに運ばれてきたのは、双翼の想像を超えるケーキだった。
炬燵の上にドーンと置かれた佳奈芽の特製クリスマスケーキ。それを見た双翼は目を見開いた。 なぜなら、そのクリスマスケーキが3段もあったから。バラを模した砂糖菓子をはじめとして、ケーキのいたるところに豪華な装飾が施されていたから。二人で食べるには少々大きすぎるのでは? と思われるサイズだったから……。 そう、それはクリスマスケーキというより、ウェディングケーキを思わせるような出来栄えだった。 あまりの豪華さに、思わず双翼が突っ込む。 「……結婚式にはまだ早いぞ」 「あはは、ちょっと張り切りすぎちゃいましたかね?」 苦笑いする佳奈芽。 「でも、どうしても双翼さんに喜んでもらいたくって」 ついつい頑張りすぎてしまいました、とはにかむ。 「……佳奈芽」 分かっているのだ、言葉にしなくても。彼女が自分のためにどれほど頑張ってくれたのか、なんてことは。このケーキを見れば一目瞭然だ。 突っ込みを入れるだけではなくて、何か気の利いた一言でもかけてやりたいのだが、自分の不器用で照れ屋な性格がうらめしい。 「えっと、結婚式には早いけどとりあえず、食うか?」 「はい」 微笑む佳奈芽。その笑顔にぐっと息が詰まる。 (「……いつか、これが本当にウェディングケーキになるかもしれないな」) その言葉は呑み込みつつも、二人で豪華なケーキを食べて。
3回目のクリスマスは、こうして過ぎていったのだった。
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