●『素直になれたクリスマス〜北欧の妖精に想いを託して〜』
宝石の舞台で舞う天華――華やかなイルミネーションに照らされながら、優しく降りしきる雪。 「……だったんだ」 「凄いですね」 アルノーが、今まで経験した楽しかった出来事、活躍した依頼の話等を、人懐っこく楽しそうに話し、茜は笑顔で静かに相槌を打ちながら、嬉しそうに聞いている。 伝えた想いを受け入れて貰えた嬉しさから饒舌になってしまうアルノーと、自分の知らない出来事を話して貰える嬉しさで自然と笑みが浮かび、そして真っ直ぐな瞳で真剣に聞く茜。 しかし、どこか恥ずかしそうな、ぎこちない空気が流れているのは、しょうがないのかもしれない。二人はさっき恋人になったばかりなのだから。 ふと会話が途切れると、 「この子ね、君ともっと仲良くなりたいから、今度から君の事を『アル君』って呼びたいんだって。君はどう思う?」 茜そっくりなニッセ人形が喋って――いるように見えた。 人形の後ろにある茜の顔は恥ずかしそうに紅く染まっている。それに対して、 「いいんじゃねぇの、別に問題なさそうだぜ。尤もこいつはあんたの事、今までと変わらず呼びたいみたいだけど……それってどうよ?」 アルノーそっくりなニッセ人形が問いかけてきた。 人形の後ろにあるアルノーの顔はうっすら紅く染まりながらも、嬉しくてしょうがない、という瞳をしている。 そのアルノー人形の言葉に、茜はニッセ人形を口元に当てたまま、何度も何度も嬉しそうに頷いた。
その後も、色々な話をしながら歩いた。歩調がいつもよりゆっくりしているのは、1秒でも長く一緒に居たいからなのだろう。 雪が降る程寒いのに、二人の心はとても温かいから、身体の寒さなんて気にならない。 ふいに、アルノーが茜の背後に回りこむ。 「……?」 どうしたんだろう、と、茜は足を止めて、アルノーを振り返ろうとした瞬間、 「……!?」 ふわりと抱きしめられたのだ。 「ずっと、ずっと離さないから……何時までも僕の側にいてね」 耳元で優しく囁くアルノーの言葉に、茜は驚いて顔を真っ赤にしながら、 「……うん。ずっと……!」 目尻に光る雫を浮かべて、とても幸せそうな――イルミネーションの煌きにも負けないくらいの、輝く満面の笑顔でアルノーの言葉を、想いを受け止めた。
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