ソフィー・セルティウス & 鏡・月白

●『今夜は、特別だから…。』

 今日は雪のクリスマスイブ。けれど、家の中は外みたいに寒くはない。むしろ今のソフィーには、暖かな部屋の温度すら暑いと感じるほどだった。それもこれも、彼のせいだと、テーブルの向かい側に座る少年を見ながら思う。何故なら彼女は今、月白の希望で、ちょっぴりきわどい赤のミニスカートに、赤い帽子と赤い服、ありていに言うならミニスカサンタの格好をしているから。この格好はかなり、恥ずかしい。
「月白さん、似合う……?」
 頬を赤らめ、スカートのすその丈を気にするソフィーの問いかけに、リクエストした側の月白の方もドキドキして照れてしまっていた。
「……うん。すごく可愛い」
 その後、お互いに少しだけ緊張しながらプレゼントを交換した。その後、ソフィーが持ってきたケーキを取り出す。ケーキは、一生懸命デコレーションしたであろう、生クリームとフルーツで綺麗に彩られていた。そしてソフィーは、フォークを持って月白を少し見上げる格好になる。熱心に彼女を見つめてしまっていた月白は、ほんの少し視線を逸らす。けれど、そらしきれずにちらちらとそちらを見ていた。
「こういうの、好きなの……? あ。食べさせて、あげる」
 月白が頷くと、彼女は大きなフォークをケーキに突き立てて……あれ、切り取った欠片が少し大きくないだろうか。一口で入るのか、ちょっと怪しい特大サイズに見える。月白も一瞬表情が硬直する。
「えっと……あーん」
 ソフィーはフォークを月白の口元に近づけていく。彼女もこんな格好でいるせいか緊張しているのである。ちょっとテーブルに乗り上げる格好になると、少しだけ彼の顔が近く見える。
「あ、あれ? 一口が少し大きすぎじゃないでしょうか……」
 そんな月白の呟きにも気づかないのか、真っ赤になったソフィーはフォークに乗ったケーキをぐいと彼に突き出す。真剣な様子の彼女に、彼も意を決した。出来る限り、むしろ限界を超える勢いで口を大きくあけてから、大きなケーキの欠片にぱくりと噛み付く。さて、ケーキのお味は……これからの二人の時間を表すように、とても甘くておいしかった。しばらく咀嚼して飲み込んでから、口を開く。
「うん。 こんなにおいしいケーキを食べられて、幸せです」
 テーブルに少し乗り上げて、そっとお礼の言葉を告げる。彼女の顔は瞬く間に真っ赤になった。
「私も、すごく幸せだよ」
 満面の笑みを浮かべたソフィーに、月白も笑い返す。じんわりとお互いの心が満たされていく感覚が何よりも心地よい。長い夜も、やがて来る明日も、二人一緒でならいつまでも。まだまだ夜は長い。二人のドキドキな時間は、まだもうちょっと続くのである。



イラストレーター名:みろまる