●『来年の干支にちなんで?』
12月24日、世間がクリスマスでにぎやかな頃、睦美は愛すべきアクアリースを自室へと招待していた。時刻は18時頃だろうか、冬は日が暮れるのが早いため、辺りはすでに真っ暗である。それとは対照的に明るく温かな室内に睦美のゴキゲンな声が響く。 「今年のクリスマスは来年の干支にちなんで、コレと同じくウサギさん装備でそろえてみましょうかと♪」 そう言って睦美は手にした携帯ゲーム機をアクアリースへと向けた。ゲーム画面には厚手の民族服を着た少女がウサミミ姿で待機しているのが見える。 「ハマったんですね……睦美さん」 今流行りのゲームを片手に、睦美はええ、と答える。 「アクアちゃんにとってもお似合いだと思いますのよ?」 そう言って睦美が取り出したのは折りたたまれた衣装一式であった。 「はい、どうぞですわ♪」 満面の笑みで衣装を差し出す睦美に流され、衣装を思わず受け取ってしまう。 「ちょっとだけ、ですよ……?」 予想より軽めの衣装に対して、少し不思議に思いながらも着替え始めるアクアリースと、それを満足そうに見つめる睦美。 「おっと、アクアちゃんを見ているのもいいけど、私も着替えないとですわっ」 少しでもアクアリースを視界に入れて居たいとばかりに、てきぱきと着替えてゆく。 「あ……れ?」 着替え終え、違和感に首をかしげたのはアクアリースだ。彼女が着ていたそれは、長いウサミミの付いたサンタ帽子と、露出が高くぴっちりとしていて、身体の線が出る衣装であった。アクアリースは姿見で自分の姿を確認すると、まるでバニーガールの様な自分の姿に頬を赤らめる。さっき見たゲーム画面の少女は全体的に厚着であり、こんなに露出は高くなかったはずだ。 「もしかして……これ、ゲームの装備と……関係ない……?」 「ちゃんと着てからそういうこと言ってしまうアクアちゃんマジプリティーですわー♪」 睦美は凄い勢いでアクアリースを抱きしめると、優しく頭をなでる。 「実は……着せてみたかっただけ……?」 「イエス! その姿、ナイスプレゼントでしたわアクアちゃん♪」 「もう……しょうがないんですから……」 ハートが飛び交う睦美の様子に、しょうがないと言いながらも、これも悪くはないかなといった様子のアクアリースであった。
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