氷室・雪那 & 御巫・終凪

●『輝ける聖夜に』

 白を基調としたイルミネーションに彩られた、クリスマスの街並み。吐く息は冷たい空気に凍り、白く浮かぶ。
 光に縁取られた街路樹。行き交う人々の活気。恋人同士、友人同士、家族連れ……皆笑みを浮かべ、楽しそうにしていた。
 その賑やかな街角を、終凪と雪那もまた仲睦まじく腕を組んで、寄り添いながら歩いている。
 雪那はその輝かしい光景に目を惹かれ、あちらこちらに視線を移してイルミネーションを楽しんでいるようだ。
 終凪はといえば、抱えられるように絡められた腕に押し付けられる、弾力のある雪那のそれに、嬉しいような照れくさいような、そんな複雑な表情を浮かべていた。
 親密な恋人同士だという二人の仲を考えれば、照れくさいなどというのも今更かもしれない。それでも、煌々と輝くイルミネーションのもとで感じる彼女の体温と柔らかさは、常とは違う思いを終凪に感じさせた。
 白金の光に彩られたクリスマスツリー。いっそう寄り添いあい、二人は微笑み合う。
「本当に綺麗よね」
 楽しそうに終凪を見上げる雪那。寒さのせいか興奮のせいか、その頬は赤く染め上げられている。
 終凪はついと雪那の頬を撫でるとくつりと笑った。
「可愛い」
 ささやくように言えば、雪那はくすぐったそうに身をよじらせて。
 賑やかさに包まれた周囲の様子は、もはや二人の目にも耳にも届いてはいない。
 雪那は終凪の肩にそっと頭を寄せ、小さく笑う。
「私、幸せだわ。こうして終凪と一緒にいられて」
 絡められる指と指。強く握りしめられ、雪那は照れたようにふふ、と声を漏らした。
「俺も同じだ。雪那といられることを、幸せに思うよ」
 互いに愛を甘くささやき合い、時折、触れるだけの口付けをして。
 ああ、自分はこんなにも彼女を深く愛している。繋がる心の、絆の深さを改めて終凪は感じる。
 優しさも幸せも喜びも、こうして二人でいるからこそより感じられる。二人だからこそ、そう思える。
 雪那もまた、自分のすべてを包み込むような、そんな終凪の想いを感じて、嬉しそうにそっと目を閉じるのだった。



イラストレーター名:弥音