●『めりーくりすます…にゃー』
――にゃにゃー♪ にゃにゃにゃにゃっ! にゃー? 見渡す限り猫だらけな猫カフェ。周囲の事などお構いなしで、陽の当たる場所でのんびりしている猫も居れば、そこら中で揺れている猫じゃらしに飛びついてはしゃぎ回る猫もいる。 「可愛いな」 まりあが振る猫じゃらしに、全力ではしゃぎ回る子猫。その背後から、揺れる猫じゃらしに狙いを定める猫。 「お!?」 急に背後から猫じゃらしに飛びついた猫に、まりあが一瞬目を見開いて驚き、すぐに表情を和らげて、二匹の猫が喧嘩をしないように、大きく振ってみた。が、猫じゃらしの触れ幅が広くなっても、どっちにもじゃれつく二匹の猫。 「まったく……」 軽く苦笑しながらも、その瞳は楽しそうで。 「……猫だな」 流刃の膝で丸まって、いつの間にか寝息を立てる猫。流刃の持つ猫じゃらしに興味を示して、そっと顔を近付けて様子を窺う子猫。 ――かぷ♪ 「ん?」 流刃の持つ猫じゃらしの様子を窺っていた子猫が、そのふさふさに食いついたのだ。 「……よし」 子猫が咥えている猫じゃらしを、ひょいっと持ち上げると、子猫の瞳が輝き、再び食いつこうとジャンプ。した所を、流刃は少し右にずらす。狙った獲物に逃げられると追いかけ、また逃げられ……、流刃に翻弄される子猫。 「やっぱり猫は良いよな、猫は」 柔らかい表情で優しく言葉を紡ぐまりあ。 「少し休憩するか」 「うん」 流刃の提案に、まりあは同意して、持っていた猫じゃらしを手放し立ち上がった。動かなくなった猫じゃらしに一斉に飛びついた二匹の猫達は、お互いがじゃれつくせいでいつまでも動く猫じゃらしと戯れる。 流刃も猫じゃらしを手放し、子猫に獲物を渡した。膝の上の猫をそっと床に下ろすと、その猫は恨みがましい目で流刃を見、それでもまた丸まって寝てしまった。 二人はテーブルに腰掛け、湯気の立ち上る温かい飲み物を飲みながら、 「あの子達、さっきまで私の猫じゃらしで遊んでたのに、もう寝てるな」 「逆に、ずっと俺の膝の上で寝てたヤツが、毛玉と遊んでる」 くすくすと笑いあう。 何気ない日常の何気ない会話。世間はクリスマスで愛を語らう恋人に溢れても、何気ない日々を楽しむというのも大切な事で。 「今日と言う日……絶対、忘れたくないな……。私は、今……きっと、誰より幸せだ……」 思わず口に出てしまった言葉に少し照れくさそうに頬を染めるまりあ。照れくさそうにしつつも、それは偽りのない心からの言葉。 (「……同じように思ってくれたらいいな……」) ちらりと流刃を見ると、とても楽しそうな笑顔があった。
何気ない日々というのはとても大切なもので。 危険と隣り合わせな銀誓館学園の能力者は、それを痛感している。だからこそ、
何気ない日々を好きな人と過ごせるのは、最高のクリスマスプレゼント――。
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