●『Santa Claus is my Lovers』
吐いた息は白く、漆黒の空へと昇っていく。
ジングルは降り積もった雪を踏みしめながら、空を見上げていた。
隣には、大きな白い袋を抱えて鼻を真っ赤にしながらはしゃいでいる千破屋がいる。
こんな寒い夜に仕事を手伝わせることを申し訳なく思っていたのだが、彼が隣で無邪気に笑っている姿を見ると心が救われる。
去年のクリスマスは大忙しで、帰ってくる頃には夜が明けようとしていた。千破屋は自分を待ってくれていたのに、すっかり疲れ果ててすぐに眠りこけてしまったのだ。
だが今年のクリスマスは大切な彼と一緒に聖夜の街を駆け回っている。
「大丈夫かな？」
せわしない彼の行動を見てそう尋ねると、声をかけられたのが嬉しいらしく、千破屋の表情がぱぁっと明るくなった。
「いや、ウン、大丈夫！ 浮かれるだけじゃなくてしっかり！ 頑張るよ！ えと、次のヒト誰やったっけ？ プレゼント……あれ、どこ入れた……」
千破屋は、必死にジングルの助手をこなそうとしていたのだが、どうにもうまくいかないようだ。
（「あれれ……？ うわっ、もうどうしよう……わけわかんない」）
急に不安になってきて、千破屋はためらいがちにジングルをちらりと一瞥した。
「……あのさ、オレ、手伝うどころが足引っ張ってない？」
羞恥心から頬を朱色に染め、口をもごもごさせる千破屋。
そんな彼を見つめて、ジングルは目を細めると彼の頭を優しく撫でた。
「そんなことはないよ、ありがとう」
「そ、そう……？」
「チハヤ……去年のクリスマスはごめんね」
急にジングルの声が自信のない弱々しものに変わり、千破屋は目を見開いた。
まさか彼がそれほど気にしているとは思ってもいなかったのだ。
だから千破屋は彼を安心させるように満面の笑みで「違うよっ！」と声を上げた。
「そりゃ去年はじっと待ってて……それが不満とかと全然違うけど……今年はずっと一緒やろ？ しかもサンタさんの助手だもん！ もぉーどきどきふわふわする！ わー！」
言いながら、千破屋はその場でくるりと回って両手を広げた。
いっぱいに広げられた腕に、赤い頬に、髪の毛に、銀色の雪が降り注ぐ。
幻想的で、美しい光景だった。
「……雪が綺麗だね……まるで星が降りてきたみたいだ」
千破屋が綺麗だなんて今さら照れくさくて言えなくなり、ジングルがそう言うと、千破屋も空を見上げて「うわぁ」と感嘆の声を漏らした。
「さぁ、次のよい子の家に夢を届けに行こう」
ジングルが手を伸ばすと、千破屋は一度ぽかんとしてから、すぐに嬉しそうに満面の笑みで「うんっ！」とその手に応じた。
仲良く手を繋いで、二人は再び歩き始める。
二人分の足跡で平行線を築きながら。
二人で辿った軌跡の後には、きっと、みんなが幸せ一杯なクリスマス。
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＆ 矢車・千破屋
