●『寒い中でも暖め合う関係で』
辺りは誰も居ない、一面に白銀の世界。舞い降りてくるやわらかな結晶で白く白く染まっていく地面を踏みしめながら、冷奈と結城は言葉を交わしていた。 「なぁ、結城。私たち、知り合ってからまだそんなに年月は経ってないけど、だいぶ仲良しになったよな」 「そうだね、冷奈さん。一緒に居ると退屈しないし」 今日はクリスマスイブ。ふわりふわりと雪が舞う夜空をふと見上げて、ホワイトクリスマスになったね、だなんてお互いに微笑み合う。 冷え込んできた空気や雪は冷たいけれど、二人でいるならそんなことなんて気にならないくらいあたたかな気持ちになってしまう。 「ねぇ、今日は一緒にクリスマスケーキを……」 と結城が言いかけながら、冷奈がさっきまで居たとなりを見上げるとそこに冷奈の姿はない。 「あれっ? ……冷奈さん!?」 きょろきょろとするも、冷奈は何処にも見えない。寄り添って歩いていたのに急に冷奈が居なくなったことで心配になって、大声で冷奈を呼ぼうとする結城の後ろから、ぎゅむりと抱きつく冷奈。突然どこからともなく抱きつかれて驚いた結城だったが、抱きつかれた腕や背中から冷奈のぬくもりが伝わってきて思わず微笑んだ。 「そうだな、一緒にケーキを食べよう」 腕を優しくほどいて向かい合わせになり、結城の目を見つめて冷奈は言う。 「……うん」 結城はにっこりと、満面の笑みで頷いた。
それから数分にも数時間にも感じられる数秒の間のあと、冷奈がやっと口を開く。 「私たちがこんなに仲良くなった理由って……」 「密度が高かったから……それと、お互いの信頼の絆が強かったから……」 冷奈の言葉の先を結城が補足する。冷奈はうん、そのとおりだな、と頷いた。
どちらからともなく引き寄せられるようにふたりの距離が自然と近くなった。そして、雪の冷たさを忘れるような熱い口づけを交わす。 二人で居られることへのしあわせをかみしめながら、彼らはまたゆっくりと家への帰路を歩むのだった。
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