●『聖夜の契り 〜この日この夜、貴方に捧ぐ〜』
賑やかなパーティーよりも……西風寺・霧乃(天壌無窮の小さな暴風・b64088)と日玉・九白(蒼風と伴に歩む白狐・b79925)は、静かな二人だけの時を選んでいた。 そんな楽しい時間もあっという間に過ぎ去り。 いつしか、空からは雪が降り、二人は別れの時間を迎えていた。 最初に切り出したのは、九白だった。 「霧乃さん、少し……お時間いいですか?」 「ん、改まってどうしたのじゃ?」 神妙な面持ちの九白に、霧乃は思わず首を傾げる。 「えっと……実は渡そうと思ってたものがありまして……」 言いづらそうに照れながら、九白は告げる。 「プレゼントであれば、先程渡したときに交換すれば良かったじゃろうに」 そう、霧乃は先ほど、九白にプレゼントを渡していた。 そのときに渡せば、一回で済んだのではと霧乃は思ったのだ。 苦笑しながらも、霧乃は振り返る。向かい合う形になって、九白を待つ。 「その……私にも心の準備が必要といいますか、それで遅くなってしまいました」 九白はというと……薄暗い夜道でも分かるくらい、顔を赤く染めていた。 「ふむ……? 一体何をくれるというのかの?」 そのただならぬ雰囲気にほんの少し戸惑いながらも、霧乃は居住まいを正し、少し緊張して応えた。 「……霧乃さん、これを……受け取ってもらえますか?」 九白が差し出したのは小さな箱。その箱を開けて、中身を霧乃に見せた。 「………これ……は……」 目を見開き箱の中身を見て、霧乃は息を呑む。
そこには……白い指輪が月明かりを浴びて、美しく輝いていた。
「今日まで色々な事がありました。これからもきっと色んな事があると思います。それでも必ず、私は貴女の隣にいたいです」 霧乃の目をまっすぐ見つめながら、九白は真剣な表情でしっかりと想いを伝えたのだ。 「ぁ……!」 九白の持つ指輪と、彼の言葉の意味に気付き、今度は霧乃が耳まで真っ赤になった。それも一瞬で。 「これはその証……です。受け取って、くれますか?」 不安と期待の入り混じった表情で、九白はもう一度、尋ねる。 「………」 言葉の代わりに、霧乃は頷く仕草で示した。 「余も、傍にいると誓おう」 小さく呟くように、そっとそう告げて。 九白はそれを見て、嬉しそうに、愛おしそうに彼女の手を取った。 これからも共にあり続ける、その誓いの証を渡すために……。
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