●『姉妹仲良くホームパーティ』
「いらっしゃい、由良ちゃん」 「エトナ姉、お招きありがとうなのです」 今日はクリスマス。この特別な日に、エトナは義妹を招いて自宅でホームパーティーを開く事にした。 室内には豪華な暖炉、この日の為に用意したアンティークの家具、そしてテーブルの上に並べられたクリスマスケーキと一口サイズの見目美しい料理。色とりどりの飲み物もこの空間を彩るのに必要不可欠な存在だ。 「さぁ、由良ちゃん。このドレスに着替えてね。きっと似合うよ」 既にドレス姿で待っていたエトナは、由良の為に用意したドレスを彼女に手渡した。由良は頷き、着替える為に別室へと足を向けた。 きっと似合うだろう、と思って用意したドレス。義妹のドレス姿を楽しみにしながら、エトナはグラスや皿、フォークにスプーンを二人分用意する。 「エトナ姉……」 数分後、おずおずとした様子で部屋から出てきた由良がエトナに声をかけた。開いた胸元に、裾が短い露出度の高い大胆なドレス。しかしデザインは可愛らしく、エトナの思った通り、由良にとても良く似合っていた。 「とても良く似合ってるよ。さぁ、座って」 エトナが座るように促すが、由良は何故か座ろうとせずに立ったまま、恥ずかしそうに頬を染めている。 彼女が椅子に座らない理由。それはドレスの裾の短さにあった。座れば確実に見えてしまうだろう。由良はそれが恥ずかしい為、座るのを拒んでいた。 エトナはそれを知っていた。知っていて、敢えて座るように薦めていた。 「由良ちゃん、ずっと立ってたら疲れちゃうよ?」 「座ったら見えてしまうのです……」 「大丈夫だよ。私しかいないんだしね」 「は、恥ずかしいのです……」 頑なに拒む由良に、苦笑する。 エトナはナイフを手に取ると、テーブルの上に置いてあるケーキに刃を入れた。木の幹を模したケーキを適度な大きさに切り、小皿に乗せる。クリームとイチゴの入ったケーキは見るからにとても美味しそうだった。 フォークを添え、由良の前に差し出す。 「美味しそうでしょ? ね、一緒にケーキ食べようよ」 由良は戸惑ったようにケーキを見つめていた。 目の前にあるケーキも含め、ここにあるのは全てこの日の為にエトナが用意してくれたもの。エトナが由良と過ごす為に用意してくれたもの。 それなら、取る行動は決まっていた。 「……座るのです。でも、見えても何も見なかった事にしてほしいのです」 恥かしそうに呟いた由良の言葉に、エトナが顔を輝かせる。 「勿論だよ! 安心して」 こんな笑顔が見られた事が嬉しくて、思わず由良も笑顔になる。
二人で食べるケーキはきっと、とても甘くて、とても美味しいだろう。義姉妹の笑顔は、そんな確信に近い予感を残した。
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