●『帰り道』
「楽しかったですね。クリスマスパーティ」 聖が横を並んで歩く聖弥に笑いかける。 「あぁ……」 聖弥も聖の言葉に微笑んで頷いた。 毎年様々な趣向を凝らすパーティーが随所で開催される銀誓館学園のクリスマス。2人が参加したのは普通のパーティイベントであった。が、流石は銀誓館クオリティというか、皆で作ったケーキはウェディングケーキ並みの大きさになったが。 ウェディングケーキという単語に顔を紅くしてしまったのは、ついさっきの出来事。隣を歩く恋人は紅くなった聖に気付きはしたものの、何で紅くなったかまで気付いているのかどうか……。 2人は他愛のない話をしながら寄り添って歩く。そんな時間はあっという間に流れるもので、いつの間にか駅まで辿り着いていた。 最終電車間際のこの時間は、パーティを楽しんできたと思われる恋人同士や数人のグループ、これからサンタになるであろう仕事帰りでプレゼントを持った人などがちらほら見受けられる。 「少し早く着いてしまいましたね」 電車の発車時間を告げる電光掲示板を見て、次に時計を見た聖が呟いた。 「そうだな……そこに座っていようか……」 聖弥が指したのはホームのベンチ。 「はい」 2人はベンチに腰を下ろし、持っていた荷物もベンチに置いた。 (「もう4回目か……。こうして聖弥さんと過ごすクリスマスは……」) 共に重ねた短くはない月日を思って幸せな気分に浸る聖。 その横の聖弥が、ふと何かが気付いたように空を見上げる。 「聖……空……」 「?」 聖弥に促された聖も夜空に視線を向けると、ふわふわと雪が舞っていた。 「ホワイトクリスマスになりましたね」 「あぁ……」 瞳を輝かせながら囁く聖に、すっと何かが差し出される。 「寒いからな……」 ホットの缶コーヒーだった。 (「聖弥さん……いつの間に……」) 自分の気付かぬうちに、自分の為に何かをしてくれるというのは本当に嬉しく。 「有難うございます」 聖は微笑んで暖かい缶コーヒーを受け取った。
心まで温かくなる缶コーヒーを――。
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