●『初めてのクリスマス』
「メリークリスマス」
鈴を転がすような声と、凛と澄んだ声と――小鳥とアズニーダの声が重なる。
二人のささやかな、初めてのクリスマスパーティがその掛け声でスタートした。
ローテーブルにはサンタの乗ったブッシュドノエルと、グラスに注がれた炭酸入りのドリンク。
飾られた小さなツリーと、ロウソクの明かりで淡く照らされた空間がクリスマス気分を盛り上げてくれる。
サンタを切らないように気をつけながら、ブッシュドノエルを食べやすい大きさに切り分けた。
切り分けたケーキをお互いの皿にのせ、「いただきまーす」と小鳥がパクリと一口。
「おいしい〜」
小鳥の笑顔を見て、アズニーダも自分の皿からケーキを口に運んだ。口の中に広がる甘味に「ケーキだな」とやや当たり前の感想を抱く。
小鳥が急にアズニーダにぴたっとくっついてきた。
何か、と視線を向ければ、小鳥がフォークに一口分のケーキをアズニーダの口元へと運ぶ。
「アズ、あーん」
「――……」
可愛い恋人にそうされて、断れる男がいるだろうか。いや、いない。とりあえずアズニーダが拒むはずがない。
ぱくりと小鳥の手から一口、食べる。味は変わらないはずだが……違う意味で『甘く』感じた。
自分から仕掛けた小鳥だったが、アズニーダが食べた後に「やっぱこれちょっと恥ずかしい」と顔を赤くする。
「小鳥」
お礼とばかりに、アズニーダも小鳥に一口分のケーキののったフォークを差し出した。そんなアズニーダの行動に小鳥も小さな口を開ける。パクリと食べて「おいしい」と笑った。小鳥の笑顔にアズニーダも幸せな気持ちになる。
小鳥がおもむろに「アズ」と呼んだ。
アズニーダが振り向いたところで、頬に付いたクリームをキスで柔らかくとった。
しばらく穏やかにお互いに食べさせっこしたりだが、微炭酸でも酔っぱらう性質の小鳥が、グラスに入った炭酸入りのドリンクにだんだん酔ってきて、猫のようにじゃれつく。アルコールなんて、一滴たりとも入っていないというのに。
「アズ〜」
小鳥はアズニーダの後ろから抱きついた。
そんな小鳥に手を伸ばすと、甘えるようにアズニーダの手にすり寄っり、そのまま猫のようにしなやかに膝の上に移動する。
満足気にちょこんと膝の上におさまった小鳥ののどをアズニーダは軽く撫でた。小鳥の顔が軽く上向きになったところで、囁く。
「――小鳥も、クリーム付いてるよ」
アズニーダは呟きと共に、そっとキスをした。
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＆ 春野・小鳥
