●『聖夜に音を紡いで』
「わあ、イルミネーション綺麗ー♪」 夜の闇を照らす幻想的な光に、桃は歓声をあげた。 「確かに。冬のイルミネーションって、やっぱ空気が澄んでるのもあって、綺麗にみえんのかな」 桃と並んでイルミネーションを眺めていた纏は、柔らかい表情で目を細める。 「見てるだけであったけーし、きらきらすげー」 纏の言葉に、桃はにこにこしながら頷いている。 「うんうん! クリスマスと云えば、やっぱりこれだよね」 そんな会話を交わしていると、二人の間に雪がふわりと舞った。 桃は落ちてきた雪を手ですくおうとしたが、それは触れるとすぐにとけてしまった。 「雪まで降ってるし、なんだかすごくロマンチックで素敵〜」 「ホワイトクリスマスってやつ?」 纏は白い息を吐いて空を見上げた。 「あ、そうだ!」 桃は思いついたように、近くにあったベンチに纏を座らせた。 「纏くんギター持ってるし、クリスマスの曲が聴きたいな」 無邪気な調子で桃が続ける。 「折角の特別な日だもん、その思い出に、ね」 「俺のギターでいいの?」 纏が訊ねると、桃は嬉しそうに頷く。 「……ならば、桃お嬢様に1曲」 纏は、照れ隠しでそう言いつつギターを取り出した。 音を確かめ、よく耳にするクリスマスソングを奏で始める。 流れる音楽に耳を傾けていた桃は、気分がのってきたのか、メロディに合わせて歌を口ずさむ。 それに気が付いた纏は、ギターを弾きながら笑みを零した。 曲が終わると、桃がえへへと笑った。 「なんかすごくクリスマスって感じー」 「桃ちゃんが楽しんでるならよかったよ。メリークリスマス、桃ちゃん」 桃は纏と笑い合い、もう一度イルミネーションを見上げる。 「今年の最後に、素敵な想い出になったな」 「想い出か……今年はいろんなところに行けて楽しかったし、また遊ぼうぜ」 こういう友達との時間も、悪くない。 「ねえ、もう1曲やろう!」 さきほどの演奏が気に入った桃は、今度は別の曲で合わせてみようと提案する。 「おっけーもう1曲いこうぜ!」 寒さも忘れ、二人は新しい音楽を奏ではじめた。
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