●『Second Christmas』
「こんな綺麗なイルミネーション、初めて見ました……!」 目の前の光景に、シュレーンが感嘆の声をあげる。 桟敷に手を引かれ、二人でダンスパーティを抜け出した先。 そこで待っていたのは、色とりどりの光で飾られた大きなツリーだった。
辺りには、他にも多くのイルミネーションがある。 そんな中で、目の前のツリーが何よりも綺麗に見えるのは、冬の澄んだ空気のせいだけではない。 桟敷が、シュレーンに見せたいと思ってくれたものだから。 二人で過ごしたたくさんの時間が、シュレーンの中で浮かんでは滲む。もしかしたら、今日、二人で寄り添うことのできない運命もあったのかもしれない。そう思うと、怖くて、それ以上にこの瞬間が大切に思えた。
ツリーの灯りを指差して、イルミネーションの綺麗さを伝えようとする。そんな風に喜んでくれるシュレーンの姿が桟敷にはいとおしくて、その背中をそっと隣に抱き寄せた。 「あっという間だったね、2年間」 桟敷が不意に言って、それだけで言葉が途切れる。 気の利いたことを続けようとしたけれど、寄り添って立つ温もりに、何も言えなくなってしまった。 「本当に、過ぎてしまうとあっという間ですね……」 沈黙からも、確かに伝わってくるものがある。引き寄せてくれる腕に安心して、シュレーンも桟敷の肩に鼻先を擦り寄せた。
この二年間のこと、今二人で一緒に居ること。こうして、綺麗だと思ったものを一緒に見てくれて、同じ気持ちになれること。胸がいっぱいだった桟敷の口から、声が零れた。 「今年も、わがままいっぱい聞いてもらっちゃったけど、まだひとつ」 今日まで積み重ねてきたわがままが、またひとつ増える。 「これからも、もっとずっと、傍にいさせてください」 桟敷の腕の中で、シュレーンが小さく顔を上げる。 「私の我侭も聞いてくださいますか?」 これからも、たくさんの時間を二人で積み重ねたいから。 「何があっても、二人一緒に生きていきたい」
クリスマスに、二人でツリーを見ている。 これまでの時間とこれからの時間を思えば、ほんの一瞬のような思い出。 それでも、同じものを見て、同じことを願えたこの瞬間は、二人の中で、きっと宝物になる。 (「偶然見つけたの! こっちこっち!」) イルミネーションのように、きらきら光る記憶として。
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