●『おこたで過ごす、欅田くんとのクリスマスinマヨイガ』
「いやーおこたって、人間の考えた最高の文明の利器だよねー」 ぬくぬく、と炬燵に潜り、小春はほっと息を付いた――ここは、ほかほかであったかな、マヨイガの幸せ空間。巨大かまくら。 ひょっこりと欅田くんが小春と炬燵の間から顔を出した。小春の周りのふわもこ達が、ピョコピョコと跳ねる。 「こんなさむーい日はおこたとかもふもふとか……どっちも一度に楽しめる僕って幸せ者? そう思うよね? 欅田くん!」 ぎゅっ、と小春は欅田くんを後ろから強く抱き締めた。苦しくはないのだろうか? 「あ、こら! ぷにぷにするな!」 しかし、その心配は無用だった。嫌がることもなく欅田くんは小さな手を伸ばし、小春の頬をぷにぷにして遊んでいる。 ケットシー・ワンダラーである欅田くんに会話能力はない。しかし、会話等無くても彼らは通じ合っていた。 「……欅田くん、今日はゆっくりしようねー♪」 そんな彼らが一緒に戦うのは、12月25日を境に終わる――マヨイガに遊びに来たのは、お別れ会も微妙に兼ねていた。 とはいっても、完全なお別れではない。ただほんの少しだけ、寂しくなるだけだ。
小春の頬をぷにぷにするのを止め、欅田くんは蜜柑の皮を剥き始めた。 「ん……? 蜜柑剥くの上手いね!? むー、主として負けてられないねー……!」 そうして、プチ『蜜柑の皮剥き大会』が開催された。一緒にもそもそと蜜柑の皮を剥く……が、どうも主の小春よりも欅田くんの方が綺麗に早く剥けている。欅田くんは器用だった。 「うーん、勝てないや」 諦めて小春は剥いた蜜柑を食べ始めた。暖かいお茶を飲む。ついでに視肉も食べてみる。 「おお! 意外とぴったり!! 欅田くんも食べる?」 小春が問い掛けてみると、欅田くんは蜜柑を向くのを止め、箸を持った。やはり、器用だ。 そういえば戦いの中でも、欅田くんは随分と器用に動き回ってくれたなぁ――小春はしみじみと、そんなことを思った。 「……明日で一緒に戦うのは終わりだねー」 戦いの日々を思い返していると、少しずつ眠気が襲ってきた。暖かい空間に、満腹感。無理はない。 小春はそのまま後ろに倒れ、寝転がった。欅田くんも彼の隣に寝転ぶ。 欅田くんの頭を撫でながら、小春はやんわりと微笑んだ。 「でも縁が消えるわけじゃない。だからまた、いつか何処かに遊びに行こうねー……」 しばらくすると、小春はすうすうと寝息を立てて眠り始めた。 「…………」 欅田くんはスルリ、と炬燵布団を抜けた。小春はまだ、眠っている。 どこかに行くわけでもなく、ただ、欅田くんは皺の寄った布団を伸ばし、小春の身体に掛けただけだ。その後で、欅田くんも彼の横に入り込む――その様子は、まるで、「当たり前だよ」とでも言っているように見えた。
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