●『二人のサンタクロース』
丘の上の、とある学生寮の大広間。 赤や黄色、金色の星で彩られた華やかなツリーと、プレゼントボックスが飾られたその広間のソファーに、1人のサンタクロースが座っていた。 いや正確には、サンタクロースの衣装に着替えた正樹だ。 全身赤い衣装と白いぽんぽん付きの帽子、そして大きな白い袋を持つその姿は、なかなか正樹に似合っている。もちろん、サンタ姿であってもトレードマークのゴーグルは首にかかっているところが彼らしい。 ソファーに座りながら、正樹は何かを楽しみにしているようににこにこと、そしてどこかそわそわとしていた。 彼がしばらくそうしていると、やがて階段から足音が聞こえてくる。 正樹がぱっとそちらを見やるとそこには、同じくサンタクロースの衣装を着た砂雪が立っていた。 恥ずかしげに階段を降りてくる砂雪。 「あの、に、似合ってますか……?」 おずおずと彼女が言い終わる前に、正樹はソファーから立ち上がって砂雪に駆け寄った。 そしてびしっと右手でグッドサインを出す。 「最っ高! 流石はウチの松山だよ♪」 ワンピースにアレンジされたサンタクロースの衣装に、黒いタイツ、そして白い縁取りのついた手袋、ブーツと、砂雪の銀の髪を飾る緑のリボン。それらは彼女に本当によく似合っていて、何とも可愛らしい。 満面の笑顔で褒める正樹に、砂雪は照れたように頬を染めた。 「あの、あ、ありがとう、ございま……!?」 またしても、砂雪の言葉は途中で途切れる。正樹が彼女を抱きしめたからだ。 突然抱きすくめられ、砂雪はびっくりして目を丸くした。 「メリークリスマス……」 砂雪の耳元で、正樹が囁く。 その優しい響きにますます顔を赤くしながら、砂雪も恥ずかしそうに、それでいて嬉しそうに言葉を返した。 「メ、メリークリスマス、です……」 とても温かい、正樹の腕の中。お互いのぬくもりが感じられて、相手の鼓動が聞こえる。お互いのことが大好きだという気持ちが、伝わる。 聖なる夜、大広間の窓の外に舞う、綺麗な雪。きらめくクリスマスツリーに、お揃いの衣装の、素敵なサンタクロースのカップル。 少しだけ体を離して顔を見合わせると、正樹と砂雪は幸せそうに笑い合った。
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