●『高台から見るスカイツリー』
「うわあ〜! さやかちゃん! 大きなツリーだね♪」 高台から見える景色は、綺麗なイルミネーションで彩られた、夜の街並み。その中心で輝く巨大なスカイツリーを眺めながら、エトナは楽しそうに笑った。 「すごいですね、エトナさん♪」 エトナと一緒にクリスマスを満喫しながら、さやかは穏やかな笑みを浮かべた。 「今年もエトナさんと過ごせてよかったです♪」 「私もだよ! ありがとね♪」
2人は再び、スカイツリーを見上げた。スカイツリーの色鮮やかな飾りの中でも、一際輝いて見えるのは先端に飾られたクリスタルの星であろう。 雪の降る幻想的な夜にも負けず、それはその存在を確かに主張していた。 「あ、エトナさんのドレス。雪が付いてて凄く、綺麗ですよ」 輝いて見えるのは、何もスカイツリーだけではない。この日の為にと、エトナとさやかが身に纏ったドレスもツリーに負けず、とても美しいものであったのだ。 「ちょっと寒いけど頑張って着た甲斐があったよ! ドレスに雪がくっ付いて良い感じに仕上がったよ♪」 くるり、とその場で1回転するエトナが着ているのは、黒のミニスカートのドレス。確かに、冬の夜に着るにはかなり薄手な上、デザインもややシンプルな物である。 しかし、だからこそ雪という自然のアクセサリーが美しく映えるのだ。 「えへへ、雪がきれいで良いですね〜?」 「さやかちゃんのドレスも、良い感じになってるよ♪」 黒いドレスのエトナに対して、さやかは淡い赤のミニスカートのドレスを身に纏っていた。 「本当ですか?」 「本当だよ♪」 頭のヘッドドレスに付いた大きなリボンが、良く似合っている。そして、リボンに軽く積もった雪は、まるで宝石のようにきらめいていた。それは、ドレス自体も同じである。 そんな、雪の付いた互いのドレスを見つめ、エトナとさやかはくすくすと楽しそうに笑った。
「寒いけれど、雪っていいよね」 「ですね! 冬だけしか見られないのが、もったいないです」 「ねえ、もっと柵に近づこうよ」 エトナに手を引かれ、さやかは彼女と共に、高台に備え付けられた落下防止の柵の傍に向かった。下を見てしまうと若干足は竦んでしまうものの、美しい街並みを一望できるこの場所はまさに、2人だけの特等席であった。 「わあ……! 凄いですねー!」 「凄いよね! ねえ……さやかちゃん」 ふと、エトナに名前を呼ばれ、さやかは隣にいた彼女の方に視線を動かした。 「来年も、また来ようね♪」 「はい!」 雪の降る、美しい夜――来年の約束を交わし、2人は仲良く、手を繋いで帰っていった。
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