●『聖夜の初プリ』
街も賑わうクリスマス。大通りに面した街路樹はイルミネーションを施され、ショーウィンドウも鮮やかに彩られている。 思う存分遊んだ帰り道。これといった目的もなく、ベルナルドと遥炯は街をうろうろとしていた。 暗くなるまで、まだ時間はある。 これからどうしようか、と周囲を見回していた遥炯の目に入ってきたのは、一店のゲームセンター。 「よし、ここで遊んで行こう」 言うや否やさっさと店内に入っていく遥炯に、ベルナルドは従った。 やはりというか何というか、店内はカップルや女の子たちで賑わっている。 けれど二人は気にするふうもなく、店の奥へと進んでいった。 「あ、プリクラある! ……やる?」 「プリクラって何」 「えー何ベル、お前知らないの……!? ちょ、来い! 教えるから!!」 「え、ちょ」 遥炯はベルナルドの困惑もお構いなしに、ぐいぐいと手を引っ張っていく。 女の子達がキャーキャーとはしゃいでいる横を通り過ぎ、二人は一台のプリントシール機に飛び込んだ。 「プリクラってのは、まあ、要は何枚ものちっちゃい写真がシールになってるやつのことを言うんだけど」 遥炯は投入口に数枚の硬貨を入れ、手順に従って背景やフレームなどを選んでいく。 その様子を、ベルナルドは彼の隣で興味深そうに眺めていた。 「こんなふうに色々ある中から好きなの選んで……」 「うん」 「で、撮る! ……ベル、もっと寄れって!」 なかば強引にベルナルドと肩を寄せ合い、二人仲良くくっついてパシャリ。 しばらくして画面に映し出された写真を見て、ベルナルドはへぇ、と感嘆の声を上げた。 「なるどほどね」 感心しきりのベルナルドに、遥炯はタッチペンを手渡す。 「はい、こっちベルのな」 「……何これ。ペン?」 「そう。こいつで色々書き込んだり……ほら、こーしてマークぽちぽち入れられんの」 言いながらためしにと遥炯はマークを貼り付けてみせた。 「へぇ」 「てことで、色々書いちゃおうぜ」 にっと楽しそうに笑う遥炯につられ、ベルナルドも笑みを浮かべる。 あれやこれやと相談しながら画面に書き込めば、あっと言う間に画面は賑やかになっていって。 最初は考えつつ書いていたベルナルドだったが、遥炯の勢いを見てだんだんと遊び始めていた。 「こーやってるとさ」 「うん」 自分たちがはしゃいでいることに気が付いて、二人は顔を見合わせる。 「何か、女子高生みたいだ」 はもる声とかぶる思考。 二人は思わずぷっと噴き出し、おかしそうに笑い合うのだった。
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