●『初めてのクリスマスデート』
バレンタインのイベントをきっかけとし、その後も交際を続けていた明と由紀は初めてのクリスマスを迎えた。 徐々に仲を深め、関係が変わってからは仲間と一緒に遊ぶ事が多かった。 そのため、二人っきりで出かけるのは初めてだ。 出かけるといっても、銀誓館学園からそう遠くないクリスマスイルミネーションを見に行く、ちょっとした散歩のようなものではあったが。
深夜に近い時間。 外では、はらはらと雪が舞っている。 明は、恋人と夜中に二人っきりということに胸が高鳴っていた。 この日のためにと意気込んで購入した、ちょっと大人びた洋服は由紀の目にどう映っているだろう。 それから、恋人と二人で巻くために頑張って編んだ、少し編み目の歪な長いマフラー。 (「外は雪……一つのマフラーを巻くには良い口実になる……!」) 由紀を見ると、服装は暖かそうではあるが、首周りが少し寒そうだった。 ますます背中を押され、明は思い切ってマフラーを取り出した。 「えへへ〜、こんなこともあろうかと、お姉さん、超長いマフラーを準備していたのぜ。二人で巻けば暖かさ倍増なのぜ」 由紀は、丁度首の辺りが寒かったこともあり、マフラーを見て頷く。 「む……二人で一つのマフラー。知識としては知っていたが、なるほど、良いかもしれんな」 そんなやりとりを交わしつつ、一つのマフラーを巻いて寄り添うと、本当に暖かい。 隣に大切な人の温もりを感じながら見るイルミネーションは、格別に美しく見えた。 由紀はクリスマスデートをするということで、少しでも明を楽しませたい、良い思い出を作りたいと思い、この場所に誘った。 そして、誘って良かったと感じていた。 明も楽しそうにしているし、こんなに素敵な時間を過ごすことができたのだから。 普段表情を変えない由紀が、穏やかで柔らかな笑みを浮かべる。 明はイルミネーションを見るフリをしつつ、そんな由紀を満面の笑みで眺めながら、特別なひと時を過ごした。
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