●『White Wedding』
馨と優は、籍自体は春頃に入れたが、式はまだだった。 「折角だからクリスマスに式をあげようか。優のウエディングドレス見たいし」 「か、馨ちゃんがウエディングドレス見たいなら着てやらないこともないんだからね!」 馨がにっこり笑って提案すると、顔を真っ赤にして少し目を泳がせる優。 そんな優が可愛くてますます愛しくなったのが秋の話。
スラっと伸びた長身を黒いタキシードで包み、他には誰もいない教会で愛しい妻を持つ。 その表情は何時になく緊張して、そわそわして落ち着かない。 (「あぁ……凄くドキドキする。きっと優は凄く綺麗になってるんだろうな。まだかな……」) 静かに音もなく教会の扉が開くと、そこには誰よりも愛しいウェディングドレス姿の愛しい妻――優。 優は、慣れないドレスを着て緊張気味に慎重に歩き、馨の横へと静かに並ぶ。 馨は、横に来た優を真っ直ぐ見つめ、 「……うん。凄く、綺麗だよ、優」 うっとりと呟いた。 その言葉に優は真っ赤になり、握り締めた拳がぷるぷる震えている。 (「〜〜〜〜〜〜!! が、我慢だ。今日は我慢するんだ! でも、なんかむかつく」) 「………恥ずかしい奴」 ぷいっとそっぽを向いた優は耳まで真っ赤になっていた。 馨は、そっぽを向いた優に軽く苦笑して、そっと左手を取る。 「……っ」 一瞬びくりと緊張を走らせる優。 その薬指に永遠を象徴する銀の結婚指輪をはめ、 「優、俺は君を永遠に守って、愛すると誓うよ」 そっとヴェールを持ち上げて、誓いのキスを落とす。 「〜〜っ!!」 優は、ぎゅっと目をつぶり、恥ずかしさに逃げ出してしまいそうになる自分を必死に抑え、 「……俺も、永遠に馨ちゃんを愛するって誓う……。でも守られるだけなんて嫌だからね。俺も馨ちゃんを守るから」 真っ直ぐに馨の目を見て、その言葉はしっかりと。 「うん、分かった。愛してる、優」 優の真っ直ぐな瞳を受け止め、優しく微笑む馨。 「……俺だって愛してるんだからね!」 今にも顔から湯気が出るのではないかという程、顔を真っ赤にした優。 投げやりに聞こえるその言葉は、馨には何よりも嬉しく。
二人しかいないはずの教会で祝福の鐘が鳴る。 それは聖なる日に誓いを立てた夫婦へ奇跡の贈り物――。
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